子どもの夢の叶え方

東ちづるさん(一般社団法人Get in touch理事長)インタビュー

2012年、誰もが生きやすい世の中“まぜこぜの社会”の実現を目指す「一般社団法人Get in touch」を立ち上げ理事長に就任した女優の東ちづるさん。東さんをボランティアに駆り立てるもの、“まぜこぜの社会”を実現するために私たちにできることとは?(インタビュー:2013年10月29日(火) / TEXT:キッズイベント 高木秀明 PHOTO:森健二)
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キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

親の言葉が子どもに与える影響、子どもの気持ちは、絶対にわかる!

ー 1992年、32歳のときに骨髄バンクの活動をはじめ、1999年、39歳でドイツ平和村の支援活動を始めています。しかし同じ時期、東さんご自身がアダルトチルドレン(AC)による解離性健忘症でカウンセリングを受けられています。自分自身も辛い時期だったと思うのですが?

当事者ではなくて、このようなボランティア活動をしている人のほとんどは、おそらく自分自身も救われたい人だと思います。自分のSOSにリンクしているというか、ちょうど私が白血病の少年のドキュメンタリーをテレビを観たとき、私も生きづらさを感じていて、だけどそう感じるのはなぜなのか、原因や理由がわからない。だから普段通り生きている。その少年はまったく泣き言を言わなくて、本当は死にたくないとか、なんで僕がこんな病気にとか、いろいろ言いたいことがあるんだろうな、ということを感じて、私の中のSOSの原因をクリアにするというか、明確にするため、もちろんそれは無自覚に、なのですが、興味を持ったのかな、と思います。カウンセリングを受けて自分のSOSの原因がわかってからは、「活動したいです」という方に会うと、「あっ、以前の私だな」という人がたくさんいます。そうか、あなたが手を差し伸べてほしいんだね、と。原因がわかってからは、私は気持ちがすごく楽になりました。ボーダレスというか、みんなそんなに変わらない、何かしら自分の運命と闘っているんだな、と、以前よりも強く思えるようになりました。

【アダルトチルドレン(AC)とは?】
子どもの頃に親から受けた物理的・心理的な傷が癒えないまま大人になり、自信がない、いつも不安など、心理的な症状を抱えるようになった成人のこと。自己肯定感が持てず、相手の非合理的な期待に応えることが生き甲斐となり、DVの被害者となったり、心理的に不安定な状況になることが多い。大人になっても心は子どものまま、大人になりきっていないという意味ではありません。
※詳しくは書籍 「“私”はなぜカウンセリングを受けたのか?「いい人、やめた!」母と娘の挑戦」 をお読みください。子育て中の方にはおすすめの書籍です。

ー ACの原因のひとつに、親の言葉の暴力があるかと思います。しかしときには強く言うことも必要です。その言葉が暴力になっているか、子どもがどう感じているか、子どもの気持ちはわかりません。その境界はどう見極めればいいでしょう?

子どもの気持ちがわからないと言うけれど、わかるはずですよ。だってみんな子どもだったから。そして今も子どもですよね。親御さんの存命いかんに関わらず、誰かの子ども。なのに親になった途端、“子どもの気持ちがわからない”と思い込みはじめてしまう。親になろうとする、と言うか、親は、何もしなくても親なので、親になろうとしなくていいのに、親っぽくしようとするでしょ。指導しようとか。養育はしなきゃいけないけど。

感覚的にですが、親をしない親の方が子どもたちには人気がありますよね。それは世間から言うと、ちょっとアウトな親かもしれないけど。でも子どもにとっては、守られているとか愛されているとか、その自信があれば、絶対的に親なんですよね。親が自分自身も未熟な人間なんだとわかっている方が、いい関係が築けます。親がちゃんとした親であろうと思っている家族は大変だろうなと思います。




私は親になれなかったので、子どもの代弁者として53年間生きてきました。なんで私は親になれなかったんだろうと、すごく苦悩した時期もあるんだけど、少しずつ、「そうか、これには何か意味があるな」と思うことにしたんです。私が親子や教育のことで学校などで講演しようとすると、PTAの親御さんから「母親になっていない人から講演されたくない」と言われることもけっこうあって、学校から事務所に「どうしましょう」なんて連絡があるのですが、「大丈夫ですよ、東は全部、子どもの立場で話をしますから、お子さんの代弁者だと思って聞いてください」と説明すると、納得されます。親は、子どもの気持ちを知りたいですから。本当は知っているはずなんですけどね。でも、子どもは親の気持ちはわからなくていいんです。わかろうとすると、親の顔色をうかがいながら生きていくようになってしまう。親にとってのいい子を演じ、自分らしさをなくしてしまう。そういう子どもが、キレやすくなったり、自傷行為をしたり、他人を傷つけるようになってしまうかもしれない。かわいそうです。

子どもはずっとほしかったんです。妹には4人も子どもがいるし、私の家系に子どものいない人はいなかったと思うんですよね。だから当然私もできると思ってた。でもカウンセリングを受ける前までは、子どもは怖いと思っていました。私自身が子どものとき、母親を喜ばせたいからいい子をやっていたり、先生に認められたいから優等生をやっていたり、本当はもっと悪かったりずるかったり、違うことを考えていたり、子どもはみんなそうだと思うんだけど、なんでこんな存在を大人はかわいいと思うんだろうと思っていました。私たちはもっと複雑なのに、と。ちょっと老成していた子どもだったんですけどね。自分の嫌な面がわかっていたから、子どもは怖いと思っていたんです。でもカウンセリングを受けて、自分を大切に生きられるようになったら、子どもがとても可愛くなってきました。

以前の私は、自分に子どもができたら親の気持ちもわかって、すべて丸く収まると思っていました。親にも「あのときはありがとう。お母さんの気持ちが私にもわかるようになったよ」と言えるようになると思っていた。その考えは間違いでしたが、母からも「あなたも子どもを産めばいつかわかる」と言われたこともありました。それは言ってはいけない言葉なんですよね。結果私に子どもが授からなかったので、母も自分を責めていました。ふたりでカウンセリングを受けたから、今では大丈夫ですけど。子どものいない人にも、親の気持ちをわかろうとする力はあるんですよね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ー学校の講演では、どんなことをお話するんですか?

子どもたちにアンケートをすることがあります。一番上に「あながたなりたい人はどんな人?」という質問。職業ではなく、なりたい人です。次に「好きな食べ物」「好きな色」「好きな勉強」など。途中で「お母さんの口癖は何?」とかいろいろなことを聞いて、一番最初の質問を忘れた頃に「あなたの親は、あなたにどんな人になって欲しいと思っていますか?」という質問をするんです。最初と最後の答えがマッチしていると、それは最高の家族。でも1割もいないですね。1学年で2人くらい。「僕が(私が)なりたい人になって欲しいと思っている」がいいですよね。この答えは、親からものすごく守られている、どう生きようが、応援してくれている、味方でいてくれているからできる答えで、そういう子はいじめられても親に報告できるし、テストで悪い点をとっても見せられると思います。

子どもたちの中には、「親の将来の面倒を自分に見て欲しいと思っている」とか、「お金持ち」「偉い人」「お医者さんと結婚して欲しいと思っている」などなど、親が思っている自分の将来について、そんな答えを書く子もいます。このアンケートに親も衝撃を受けるのですが、「お金持ちになってほしいとか、お金持ちと結婚してほしいなんて言ったことありません」と反論されます。子どもたちは親のことをよく見ているんです。きっとテレビなどで芸能人がお医者さんとか起業家とか結婚報告を観たときに、「いいなぁ」とか「玉の輿に乗ったわね」とか言っていて、子どもはこれがいいんだなと思うんですよね。そうすると子どもはそっちの方へ行こう行こうと、無自覚に思っちゃうんですよね。

「まぜこぜ」の社会を実現するには、親が子どもから学ぶこと

ー 「まぜこぜ」の社会を実現するには、環境問題同様、子どものときから理解するのがいいと思うのですが、親はどうしたらそれを教えてあげられますか?

1枚のガラスをはさんで、いろいろな子どもたちが向かい合って絵を描くイベントを開催します。そこには身体的、精神的に障がいのある子もいるんですが、子どもには何の垣根もないですね。言葉を持たない子どもとも、すぐに仲良くできます。子どもの適応力はすごいです。逆にお母さんはビビるんです。障がい者と一緒に遊ばせるんですか、と。でもその垣根のない子どもたちを見て、親が学ぶんです。「これでいいんだ」ってね。その方が早いですね。親が子どもに、じゃなくて、子どもから親、です。

小学生は学校の授業でミミズを飼ったりして環境問題を学ぶでしょ。その子どもの姿を見て親も学ぶ。そっちの方が早い。だから親も子どもも“まぜこぜ”で、「Get in touch」のイベントに参加してくれるといいなと思います。でも親は、何年もその考え方で生きているから、1回で本当に理解するのは難しいみたいですね。「東さんの言うことはよくわかるけど、本当にそういうふうにできるかというと不安で、やっぱり他の子と比較してしまうし、みんなが塾に行けば、うちの子だけ行かせないのはすごく難しい」という手紙をもらったりします。それは「そうなんだろうなぁ」と理解できます。私と同じようにボランティア活動をしてきた人でも、親になった途端、「やっぱり東、それは難しいよ」と言ってきますからね。「え〜、今まで一緒にやってきたのに!」って(笑)。ママ友と話をしているときに「ウチはね」と、異なる考えを言うのは、けっこう勇気がいるって。頭ではわかっていても同調圧力に背くって大変ですよね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ー ご主人との仲もとてもいいですね。忙しくて会う時間も少ないと思いますが、仲良くする秘訣は?

とにかくよく話をします。でも忙しくなると、「もう Get in touchの活動を辞めろ」とか、「誰かに任せられないの」と、ケンカになることもあります。私は一緒になるときに「私の人生を応援してほしい、できないときは邪魔はしないで」と話しました。彼は「もちろん応援する」。「応援できないときがあってもいいけど、辞めて欲しいっていうのはすごくショックだ」と泣いたこともあります。でもそのとき、彼はおもしろい手を使って解決するんです。イベント会場に知らない荷物が届いて、開けたら「Get in touch」の缶バッチが入ってた。スタッフのみなさんで付けてと最初200個プレゼントしてくれて、スタッフが付けていたらお客さんから売ってないんですか? と言われたから商品化しちゃいました。白地に丸いブルーのドットのあるTシャツも、彼がイベントに送ってきてくれたんです。そういうサプライズが好きということもありますけど、「応援している」というメッセージなんですよね。言葉では言いづらいんでしょうね(笑)。「応援してますよ、あなたの人生を」というのを、お互いに表現することが大切だと思います。

ー Get in touchの最終目標は“解散”!? そして東さんの夢は?

「Get in touch」は来年、現在クラウドファウンディングで資金を集めている「Get in touchソング」PVの発表、アール・ブリュット(障がい者アート展)、そして来年も4月2日の世界自閉症啓発デー「Warm Blue」を行なう予定です。最終目標は「まぜこぜの社会」をつくることもそうですが、社団法人の解散ですね。このような組織の存在がなくても、「まぜこぜの社会」になることです。これは私の夢のひとつでもありますが、みんなの夢ですよね。「一人で語る理想は妄想に過ぎないけど、みんなでつながれば現実になる」。ジョン・レノンの『IMAGINE(イマジン)』の世界です。私の個人的な夢は、半年休むとか。休んで世界をウロウロしたい(笑)。3ヵ月くらいなら、できるかな?

【#子どもたちへ】東ちづるさんのおすすめを紹介! 子どもたちへのメッセージも! 新型コロナウィルス感染症による臨時休校・外出自粛要請 支援企画

インタビュー後記

思っていても、なかなか実行には移せないものです。後先のことをいろいろ考えてしまったり、ちょっと恥ずかしかったり、他人にどう思われるかを考えて、動けなくなってしまう。しかし世の中はそんなことはまったく気にせず、実行に移した方がつくってきたと思っています。いろいろなことを考えるよりも先に動いてしまう人たちが。東さんも、そのひとり。

ハッキリ、サッパリ、そして素晴らしい笑顔という、東さんの見た目通りの印象に加え、しかしその笑顔の裏ではご自身も悩みを抱え、克服し、そんな中でもボランティア活動を21年も続けているというその事実には圧倒されるとともに、人としての大きさも感じました。「Get in touch」の活動を躊躇なく広めていこうとするその姿は、とても真っすぐで、パワフル。東さんのピュアな気持ちとエネルギーに、たくさんの人が惹かれるんだろうなと感じました。

「キッズイベント」は、妊婦の方も、小さなお子さんをお持ちの方も過ごしやすい、子育てしやすい社会にしたい、親と一緒に遊び、コミュニケーションを持つことで、子どもが健全に育ってくれればいいなという想いでスタートしました。だから「キッズイベント」としても、まぜこぜの社会は大賛成! これからも東さんを、そして「Get in touch」を応援、協力していきます!

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー東ちづる(あずまちづる)

広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマからコメンテーター、CM、講演、執筆など幅広く活躍中。プライベートでは、骨髄バンクやドイツ国際平和村、障がい者アート(アウトサイダーアート)のボランティア活動を20年以上続けている。2011年10月、アートや音楽などを通じて、あらゆるマイノリティを誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す「一般社団法人 Get in touch」を設立、理事長に就任。

■ 一般社団法人 Get in touchについては、こちら!

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