子どもの夢の叶え方

東ちづるさん(一般社団法人Get in touch理事長)インタビュー

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、東ちづるさんは女優・タレント業とともに、20年以上にわたり病気や障がい、親を亡くした子どもたち、外国人の方々など、今の世に生きづらさを感じているマイノリティの人々に対するボランティアを行なっています。その活動は骨髄バンクにはじまり、あしなが育英会、障がい者アートにドイツ村などなど。そして東日本大震災をきっかけに、2012年、誰もが生きやすい世の中、“まぜこぜの社会”の実現をめざす「一般社団法人Get in touch」を立ち上げ、その理事長に就任。2013年4月2日(火)の「自閉症啓発デー」では青くライトアップされた東京タワーの下で「Warm Blue」をテーマにイベントを行なったのは記憶に新しいところです。女優として、タレントとしても活躍する東さんをボランティアに駆り立てるものとは? そして、“まぜこぜの社会”を実現するために私たちにできることとは?(インタビュー:2013年10月29日(火) / TEXT:キッズイベント 高木秀明 PHOTO:森健二)

“まぜこぜの社会” の実現をめざす
「Get in touch」

ー 4月2日(火)に東京タワーで開催された「Warm Blue」の取材をさせていただきました。4月2日が世界自閉症啓発デーということ、そして「一般社団法人Get in touch」の存在もはじめて知りました。まずは「一般社団法人 Get in touch」はどんな団体なのか、教えてください。

一般社団法人 Get in touch」は、誰のことも排除せず、いろいろな人が、もっと自然に、もっと気楽に、もっと自由に一緒にいられる、“まぜこぜ”の世の中をつくっていくことを目的としています。21年間(2013年現在)いろいろなボランティアをしてきてわかったことのひとつは、楽しいところに人は集まる、ということ。なのでライブやアートなど、ワクワクすることを開催し、人を集め、そこで啓発し、理解を広めていく。マイノリティであることは問題ではなく、問題は、この国の“人権”や“福祉”への認識の低さです。「啓発しますよ」と言うと誰も来てくれないですよね。「楽しんでください!」とお誘いし、おもしろがっていたら啓発されちゃった、みたいな。講演をしたりシンポジウムに集まるのは意識のある人やその関係者。なので普段講演やシンポジウム、デモに参加しない人、選挙に行かない人を巻き込みたい。“人ごと”だと思っている人を“自分ごと”にしたいんです。

悩みながらも“楽しく集う”という活動を始めた頃、東日本大震災が起こりました。持続的な活動が必要だと感じていた矢先、自閉症の子どもとそのご家族が、周囲に迷惑をかけることを気にして避難所にいられなかったという新聞記事を見つけ、調べてみると、たくさんの人たちがやんわりと排除されたり、迷惑をかけるからとご自身が遠慮したり、障がいのある人たちだけでなく、高齢者や外国の方など、マイノリティの人たちが追いつめられていることに愕然としました。

メディアの力は大きいので、被災地の中でも、そのようなマイノリティの人たちをフューチャーしたドキュメンタリーがつくれないかと番組制作者の方にお願いしたのですが、デリケートな問題でなかなか難しいと言われて。じゃあ、私たちが! と「一般社団法人 Get in touch」を立ち上げました。でも、私たちは支援をするんじゃありません。支援はする側とされる側でボーダーができてしまう。そうではなく、一緒に活動するんです。ライブやアートなど、見えない壁を“ひょい”と越えることを、色とりどりの人と一緒に。その中でお互いを理解し、社会を変えていく。「一般社団法人 Get in touch」は、そういう活動をしています。




ー Get in touch !のプロモーションビデオをつくるために、クラウドファウンディングで資金を集めていますね。

活動するにはお金という道具が必要になります。企業のみなさんにも協賛いただいていますが、より多くの人に私たちの活動を知って欲しい、つながって欲しいと思い、私たちのテーマソング「Get in touch !」のプロモーションビデオ(PV)制作と普及の資金集めを、クラウドファウンディングというネットでサポーターを募る形で試みてみました。

クラウドファウンディングは、ネット上で「Getオリジナルブルーキャンドル+缶バッジ」「東ちづるの直筆サイン&メッセージ入り著書『らいふ』」「BEAMSと『Get in touch』の限定コラボオリジナルTシャツ」、そして来年2月に予定しているサルサガムテープ with Get in touchの「お披露目パーティー&スペシャルライヴご招待(美味しいワインとお食事付き!)」などの商品を販売し、購入していただくとそれが私たちの活動資金になるというものです。私と宮本亜門さんと一緒にランチミーティングという商品は、ありがたいことにとても人気で、すぐに販売終了になりました。

集まったお金はPV制作とツアーの交通費に使わせていただきます。テーマソングを演奏するバリアフリーロックバンド「サルサガムテープ with Get in touch」は、20人以上の大所帯です。メンバーが多いので、交通費はけっこうかかるんですよ。「Get in touch」では、できるだけ「自腹を切ってのボランティアはしない、させない」と考えています。そうでなければ、お金に余裕のある人しか活動できなくなってしまいますから。本当はギャラも出したい。無償が素晴らしいとは思っていないので。お金という道具がボランティアの間でもちゃんと回った方がいいと思っていますが、今は体力がなく、ごめんなさいね、ですね。

ー それではその体力たるお金を得るために、どういうことを考えていますか?

今進めているのは、クラウドファウンディングにもあるBEAMSとのコラボTシャツのように、いろいろな企業とコラボ商品をつくり、それを販売したり、コラボ商品ではなくても、売り上げの一部をドネーションしていただいたりしています。「Get in touch」は協賛いただいていることを広くアピールすることで、双方にとってメリットのある関係をつくります。企業のCSR活動はとても盛んになってきているのですが、どこに力を注ぐかで悩んでいる企業は多いようです。あちらに協力すると、こちらには協力しないのかと言われてしまう。「Get in touch」はあらゆるNPOや団体とつながっていくというコンセプトですから、企業にとってはつながりやすいのかもしれません。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

きっかけは21年前の
ドキュメンタリー番組
伝えたいことは何?

ー そもそも東さんがボランティア活動をはじめたのはなぜですか?

21年前(1992年)家で白血病の17歳の少年のドキュメンタリー番組を観ました。その番組のつくり方に疑問を感じたんです。泣かせられるけど、メッセージが伝わってこない。視聴率をとるためには…という番組制作側の理由も大事ですが、この少年はきっと何か言いたいことがあって出演したはずなのに、それを伝えられていないのは、とても残念だと感じて、その少年を探して電話したんです。そうしたら「骨髄バンク」を多くの人に知ってもらいたかったということだったんです。

しばらくしたら少年の妹さんから分厚い手紙が届いて、「治療法はあるのに、骨髄バンクのドナー登録が足りなくて治療を受けられない。先進国なのに…」と。「骨髄バンク」を啓発するポスターをつくりたい。東さんがモデルになって、制作してほしい。ただしお金はありませんと。「めっちゃ無理」と思ったんですけど、手紙の最後に「お兄ちゃんに死んでほしくない」と書かれていた。その気持ちは充分に届きました。つくるなら一流を! と、一流のカメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、デザイナー、たくさんの方にお願いして、印刷代はみんなで少しずつお金を出して、ポスターをつくったんです。で、さて、ポスターを貼ろうといろいろなところへ持って行ったら、どこも貼ってくれないんです。そうか、貼ってもらうためには、理解してもらうしかないんだと思って、講演会やシンポジウムを開催するようになって、だんだんこうなっていったんです。気がついたらものすごい広がってた。

ひとつには私自身が表現者として、報道番組とかドキュメンタリーのあり方に疑問があったのも事実。だから、メディアにいる人間としてできることをしようと。使命とか、そういうことは思っていませんが。もうひとつは、自分自身のため。私や私の家族、大切な人がどんな状況になったときでも「しまった」と思わないように、そういう社会の方がいいなと思って。「やっときゃよかった」と後悔をしないように、何もしないよりは活動する方が気が楽というか。21年前にそのことを知ってしまったからね。溺れている人を見つけて、「あっ、見なかったことにしよう」なんてできないですよね。

ー 骨髄バンクからはじまって、あしなが育英会、障がい者アート、ドイツ平和村、在日外国人、その他にもいろいろやっていますが、それはなぜですか? 知ってしまうとやらずにいられないとか?

それもあるけど、実は全部ゴールは一緒なんですよ。人権です。すべての団体、活動している人たちのゴールは一緒なのに、バラバラになりがち。しかもマイノリティ団体は本当に大変なので、同じ主旨の団体同士でいがみ合うこともあるんです。満たされないので、そういうことに陥りやすいんです。障がいのあり方で比較してしまったり…。別の問題をつくる必要はない。ゴールはみんな、好きに生きたいということなんですよ。だから、こんなにバラバラにやらなくてもいいのになと、私が間に入ることでお互いに協力し合うような体制ができないかなと、以前から思っていました。「Get in touch」は、どの人権をメインにするかでイベントはアートだったり音楽だったり食べ物だったりと変わりますが、どの活動もすべて同じゴールにつながっているんです。

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「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ー 東さんが間に入ることで、その状況は変わって来ますか?

最初の頃は、「東さんには、私たちの気持ちはわからない」と言われることもありました。自分自身に病気も障がいもない、近しい人にもいない。そんな人にはわからないと。最初はそれにすごく悩んで、私は関わらない方がいいのかなとも思いました。でもちょっと待てよ、わからない人とどうやって関わっていくかというのが大切なんじゃないかと。そこに気がついてからは、「あなたにはわからないと言われて、私はとても傷ついた。でも私のこの気持ちも、あなたにはわからないでしょっ?」と言えるようになった(笑)。

「私たちは、わからない者同士が、わかり合おうとする社会をつくっている」そのためなのに、「東さんにはわからない」と最初のところで排除しちゃったら、まったく前には進まない。「病気も障がいもない、なんとなく居心地の悪い私の気持ちもわからないでしょ」と笑いをとったり、そうやって本音をぶつけ合ってわかりあってきました。患者会などで自己紹介をすると、みんな病名から話し始めるんです。「今の私にはまだ病名はありません」と、芸能人だから冗談が通じるのかもしれません。その輪に入りづらいのは残念なこと。それで「まぜこぜ」でいられる社会がいいんだと思うようになったんです。

マイノリティの人がたくさんいて、その中に入ると数が逆転します。以前セクシャルマイノリティの人たちと家で飲んだときは、私がマイノリティでした。話していることも専門用語なんかがあって、まったくわからないわけではないんだけど、ちょっと馴染めない。でも彼らは普段、こういう気持ちで生きていているんだな。マジョリティの圧力って、ちょっとキツいなと感じたこともありました。どういう状態でも自分らしくいられるといいですよね。実はみんな何かしらマイノリティなんですよね。どんな状態でも誰もが楽に過ごせる社会がいいですよね。

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親の言葉が子どもに与える影響
子どもの気持ちは絶対にわかる!

ー 1992年、32歳のときに骨髄バンクの活動をはじめ、1999年、39歳でドイツ平和村の支援活動を始めています。しかし同じ時期、東さんご自身がアダルトチルドレン(AC)による解離性健忘症でカウンセリングを受けられています。自分自身も辛い時期だったと思うのですが?

当事者ではなくて、このようなボランティア活動をしている人のほとんどは、おそらく自分自身も救われたい人だと思います。自分のSOSにリンクしているというか、ちょうど私が白血病の少年のドキュメンタリーをテレビを観たとき、私も生きづらさを感じていて、だけどそう感じるのはなぜなのか、原因や理由がわからない。だから普段通り生きている。その少年はまったく泣き言を言わなくて、本当は死にたくないとか、なんで僕がこんな病気にとか、いろいろ言いたいことがあるんだろうな、ということを感じて、私の中のSOSの原因をクリアにするというか、明確にするため、もちろんそれは無自覚に、なのですが、興味を持ったのかな、と思います。カウンセリングを受けて自分のSOSの原因がわかってからは、「活動したいです」という方に会うと、「あっ、以前の私だな」という人がたくさんいます。そうか、あなたが手を差し伸べてほしいんだね、と。原因がわかってからは、私は気持ちがすごく楽になりました。ボーダレスというか、みんなそんなに変わらない、何かしら自分の運命と闘っているんだな、と、以前よりも強く思えるようになりました。

【アダルトチルドレン(AC)とは?】
子どもの頃に親から受けた物理的・心理的な傷が癒えないまま大人になり、自信がない、いつも不安など、心理的な症状を抱えるようになった成人のこと。自己肯定感が持てず、相手の非合理的な期待に応えることが生き甲斐となり、DVの被害者となったり、心理的に不安定な状況になることが多い。大人になっても心は子どものまま、大人になりきっていないという意味ではありません。
※詳しくは書籍 「“私”はなぜカウンセリングを受けたのか?「いい人、やめた!」母と娘の挑戦」 をお読みください。子育て中の方にはおすすめの書籍です。

ー ACの原因のひとつに、親の言葉の暴力があるかと思います。しかしときには強く言うことも必要です。その言葉が暴力になっているか、子どもがどう感じているか、子どもの気持ちはわかりません。その境界はどう見極めればいいでしょう?

子どもの気持ちがわからないと言うけれど、わかるはずですよ。だってみんな子どもだったから。そして今も子どもですよね。親御さんの存命いかんに関わらず、誰かの子ども。なのに親になった途端、“子どもの気持ちがわからない”と思い込みはじめてしまう。親になろうとする、と言うか、親は、何もしなくても親なので、親になろうとしなくていいのに、親っぽくしようとするでしょ。指導しようとか。養育はしなきゃいけないけど。

感覚的にですが、親をしない親の方が子どもたちには人気がありますよね。それは世間から言うと、ちょっとアウトな親かもしれないけど。でも子どもにとっては、守られているとか愛されているとか、その自信があれば、絶対的に親なんですよね。親が自分自身も未熟な人間なんだとわかっている方が、いい関係が築けます。親がちゃんとした親であろうと思っている家族は大変だろうなと思います。




私は親になれなかったので、子どもの代弁者として53年間生きてきました。なんで私は親になれなかったんだろうと、すごく苦悩した時期もあるんだけど、少しずつ、「そうか、これには何か意味があるな」と思うことにしたんです。私が親子や教育のことで学校などで講演しようとすると、PTAの親御さんから「母親になっていない人から講演されたくない」と言われることもけっこうあって、学校から事務所に「どうしましょう」なんて連絡があるのですが、「大丈夫ですよ、東は全部、子どもの立場で話をしますから、お子さんの代弁者だと思って聞いてください」と説明すると、納得されます。親は、子どもの気持ちを知りたいですから。本当は知っているはずなんですけどね。でも、子どもは親の気持ちはわからなくていいんです。わかろうとすると、親の顔色をうかがいながら生きていくようになってしまう。親にとってのいい子を演じ、自分らしさをなくしてしまう。そういう子どもが、キレやすくなったり、自傷行為をしたり、他人を傷つけるようになってしまうかもしれない。かわいそうです。

子どもはずっとほしかったんです。妹には4人も子どもがいるし、私の家系に子どものいない人はいなかったと思うんですよね。だから当然私もできると思ってた。でもカウンセリングを受ける前までは、子どもは怖いと思っていました。私自身が子どものとき、母親を喜ばせたいからいい子をやっていたり、先生に認められたいから優等生をやっていたり、本当はもっと悪かったりずるかったり、違うことを考えていたり、子どもはみんなそうだと思うんだけど、なんでこんな存在を大人はかわいいと思うんだろうと思っていました。私たちはもっと複雑なのに、と。ちょっと老成していた子どもだったんですけどね。自分の嫌な面がわかっていたから、子どもは怖いと思っていたんです。でもカウンセリングを受けて、自分を大切に生きられるようになったら、子どもがとても可愛くなってきました。

以前の私は、自分に子どもができたら親の気持ちもわかって、すべて丸く収まると思っていました。親にも「あのときはありがとう。お母さんの気持ちが私にもわかるようになったよ」と言えるようになると思っていた。その考えは間違いでしたが、母からも「あなたも子どもを産めばいつかわかる」と言われたこともありました。それは言ってはいけない言葉なんですよね。結果私に子どもが授からなかったので、母も自分を責めていました。ふたりでカウンセリングを受けたから、今では大丈夫ですけど。子どものいない人にも、親の気持ちをわかろうとする力はあるんですよね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ー学校の講演では、どんなことをお話するんですか?

子どもたちにアンケートをすることがあります。一番上に「あながたなりたい人はどんな人?」という質問。職業ではなく、なりたい人です。次に「好きな食べ物」「好きな色」「好きな勉強」など。途中で「お母さんの口癖は何?」とかいろいろなことを聞いて、一番最初の質問を忘れた頃に「あなたの親は、あなたにどんな人になって欲しいと思っていますか?」という質問をするんです。最初と最後の答えがマッチしていると、それは最高の家族。でも1割もいないですね。1学年で2人くらい。「僕が(私が)なりたい人になって欲しいと思っている」がいいですよね。この答えは、親からものすごく守られている、どう生きようが、応援してくれている、味方でいてくれているからできる答えで、そういう子はいじめられても親に報告できるし、テストで悪い点をとっても見せられると思います。

子どもたちの中には、「親の将来の面倒を自分に見て欲しいと思っている」とか、「お金持ち」「偉い人」「お医者さんと結婚して欲しいと思っている」などなど、親が思っている自分の将来について、そんな答えを書く子もいます。このアンケートに親も衝撃を受けるのですが、「お金持ちになってほしいとか、お金持ちと結婚してほしいなんて言ったことありません」と反論されます。子どもたちは親のことをよく見ているんです。きっとテレビなどで芸能人がお医者さんとか起業家とか結婚報告を観たときに、「いいなぁ」とか「玉の輿に乗ったわね」とか言っていて、子どもはこれがいいんだなと思うんですよね。そうすると子どもはそっちの方へ行こう行こうと、無自覚に思っちゃうんですよね。

「まぜこぜ」の社会の実現には
親が子どもから学ぶこと

ー 「まぜこぜ」の社会を実現するには、環境問題同様、子どものときから理解するのがいいと思うのですが、親はどうしたらそれを教えてあげられますか?

1枚のガラスをはさんで、いろいろな子どもたちが向かい合って絵を描くイベントを開催します。そこには身体的、精神的に障がいのある子もいるんですが、子どもには何の垣根もないですね。言葉を持たない子どもとも、すぐに仲良くできます。子どもの適応力はすごいです。逆にお母さんはビビるんです。障がい者と一緒に遊ばせるんですか、と。でもその垣根のない子どもたちを見て、親が学ぶんです。「これでいいんだ」ってね。その方が早いですね。親が子どもに、じゃなくて、子どもから親、です。

小学生は学校の授業でミミズを飼ったりして環境問題を学ぶでしょ。その子どもの姿を見て親も学ぶ。そっちの方が早い。だから親も子どもも“まぜこぜ”で、「Get in touch」のイベントに参加してくれるといいなと思います。でも親は、何年もその考え方で生きているから、1回で本当に理解するのは難しいみたいですね。「東さんの言うことはよくわかるけど、本当にそういうふうにできるかというと不安で、やっぱり他の子と比較してしまうし、みんなが塾に行けば、うちの子だけ行かせないのはすごく難しい」という手紙をもらったりします。それは「そうなんだろうなぁ」と理解できます。私と同じようにボランティア活動をしてきた人でも、親になった途端、「やっぱり東、それは難しいよ」と言ってきますからね。「え〜、今まで一緒にやってきたのに!」って(笑)。ママ友と話をしているときに「ウチはね」と、異なる考えを言うのは、けっこう勇気がいるって。頭ではわかっていても同調圧力に背くって大変ですよね。

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー

「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさん

ー ご主人との仲もとてもいいですね。忙しくて会う時間も少ないと思いますが、仲良くする秘訣は?

とにかくよく話をします。でも忙しくなると、「もう Get in touchの活動を辞めろ」とか、「誰かに任せられないの」と、ケンカになることもあります。私は一緒になるときに「私の人生を応援してほしい、できないときは邪魔はしないで」と話しました。彼は「もちろん応援する」。「応援できないときがあってもいいけど、辞めて欲しいっていうのはすごくショックだ」と泣いたこともあります。でもそのとき、彼はおもしろい手を使って解決するんです。イベント会場に知らない荷物が届いて、開けたら「Get in touch」の缶バッチが入ってた。スタッフのみなさんで付けてと最初200個プレゼントしてくれて、スタッフが付けていたらお客さんから売ってないんですか? と言われたから商品化しちゃいました。白地に丸いブルーのドットのあるTシャツも、彼がイベントに送ってきてくれたんです。そういうサプライズが好きということもありますけど、「応援している」というメッセージなんですよね。言葉では言いづらいんでしょうね(笑)。「応援してますよ、あなたの人生を」というのを、お互いに表現することが大切だと思います。

ー Get in touchの最終目標は“解散”!? そして東さんの夢は?

「Get in touch」は来年、現在クラウドファウンディングで資金を集めている「Get in touchソング」PVの発表、アール・ブリュット(障がい者アート展)、そして来年も4月2日の世界自閉症啓発デー「Warm Blue」を行なう予定です。最終目標は「まぜこぜの社会」をつくることもそうですが、社団法人の解散ですね。このような組織の存在がなくても、「まぜこぜの社会」になることです。これは私の夢のひとつでもありますが、みんなの夢ですよね。「一人で語る理想は妄想に過ぎないけど、みんなでつながれば現実になる」。ジョン・レノンの『IMAGINE(イマジン)』の世界です。私の個人的な夢は、半年休むとか。休んで世界をウロウロしたい(笑)。3ヵ月くらいなら、できるかな?

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東ちづる著/講談社/1,260円(税込)

20年以上続けてきたボランティア活動、幅広い芸能生活を通して見つけた「優しさ・幸せ・楽しみ」とは? 泣いて、笑って、感動しての50年の珍道中は、自分らしく生き方を楽しむ方法を教えてくれた。読むと新しい一歩が踏み出せる、身近にある幸せと愛が見えてくるエッセイ。誰でもほっこりした気持ちになれる。

インタビュー後記

思っていても、なかなか実行には移せないものです。後先のことをいろいろ考えてしまったり、ちょっと恥ずかしかったり、他人にどう思われるかを考えて、動けなくなってしまう。しかし世の中はそんなことはまったく気にせず、実行に移した方がつくってきたと思っています。いろいろなことを考えるよりも先に動いてしまう人たちが。東さんも、そのひとり。

ハッキリ、サッパリ、そして素晴らしい笑顔という、東さんの見た目通りの印象に加え、しかしその笑顔の裏ではご自身も悩みを抱え、克服し、そんな中でもボランティア活動を21年も続けているというその事実には圧倒されるとともに、人としての大きさも感じました。「Get in touch」の活動を躊躇なく広めていこうとするその姿は、とても真っすぐで、パワフル。東さんのピュアな気持ちとエネルギーに、たくさんの人が惹かれるんだろうなと感じました。

「キッズイベント」は、妊婦の方も、小さなお子さんをお持ちの方も過ごしやすい、子育てしやすい社会にしたい、親と一緒に遊び、コミュニケーションを持つことで、子どもが健全に育ってくれればいいなという想いでスタートしました。だから「キッズイベント」としても、まぜこぜの社会は大賛成! これからも東さんを、そして「Get in touch」を応援、協力していきます!

キッズイベント「子どもの夢の叶え方」第6回 東ちづるさんインタビュー東ちづる(あずまちづる)

広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマからコメンテーター、CM、講演、執筆など幅広く活躍中。プライベートでは、骨髄バンクやドイツ国際平和村、障がい者アート(アウトサイダーアート)のボランティア活動を20年以上続けている。2011年10月、アートや音楽などを通じて、あらゆるマイノリティを誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す「一般社団法人 Get in touch」を設立、理事長に就任。

■ 一般社団法人 Get in touchについては、こちら!

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