2024年3月20日(水・祝)~5月6日(月・振)フジテレビ本社屋で開催!

「オダイバ恐竜博覧会2024」監修統括 柴田正輝先生インタビュー!

お台場にあるフジテレビ本社を使用した初の恐竜展オダイバ恐竜博覧会2024 -福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!-」が、いよいよ2024年3月20日(水・祝)から開催! 日本最大の恐竜博物館「福井県立恐竜博物館」が全面協力し、同館で大人気の恐竜化石や標本の展示はもちろん、同館研究員らによる最新の研究成果も紹介します。「オダイバ恐竜博覧会2024」の監修統括を務めた柴田正輝先生に、見どころや最新の研究、恐竜絶滅の原因、そして恐竜の研究者にはどうやったらなれるのかなどについてお伺いしました!(インタビュー:2024年1月26日(金) TEXT:高木秀明)
オダイバ恐竜博覧会2024 監修統括 柴田正輝先生の写真

2024年3月20日(水・祝)から「オダイバ恐竜博覧会2024」が開催! 監修統括を務めた柴田正輝先生にインタビュー!(写真は福井県立恐竜博物館内)

「はちたま」での展示は必見!
東京湾をバックにあの恐竜が優雅に登場!

ー いよいよ3月20日(水・祝)から「オダイバ恐竜博覧会2024 -福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!-」(以下、オダイバ恐竜博覧会)がはじまります。柴田先生は「オダイバ恐竜博覧会」の監修統括をされていますが、会場がフジテレビ本社ということで、今までの展示会場とは少し勝手が異なると思うのですが、いかがですか?

まったく違いますね。1階と22階、そして最上階にあるフジテレビ本社の特徴的な球体展望室「はちたま」の3つが会場になるのですが、それぞれ距離が離れていますし雰囲気も異なります。このような会場での恐竜展というのは経験がありませんでした。

大変だったのが「はちたま」での展示です。そもそも大きな恐竜を展示するようなスペースとしてつくられていないので、制限が多い中で何をどう展示するかは議論して詰めていきました。

しかし「はちたま」の空間はとてもおもしろいですし、レインボーブリッジの向こうに東京都心を望む風景も展示の一部になるように工夫しています。それぞれの会場で、展示する恐竜の空気感をつくるように心がけて準備しています。

【レポート】「オダイバ恐竜博覧会2024」に行ってきた! 体験レポート!

【イベント紹介】「オダイバ恐竜博覧会2024 -福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!-」2024年3月20日(水・祝)~5月6日(月・振)フジテレビ本社屋で開催!




ー「オダイバ恐竜博覧会」には先生が勤めている福井県立恐竜博物館から、トリケラトプスやアクロカントサウルスなどの全身骨格標本20体以上、さらに福井で発掘された化石標本など70点以上を展示する予定と聞いています。特に注目してほしいのはどこでしょうか?

「オダイバ恐竜博覧会」では学術的な面を強く押し出すというよりも、“ザ・恐竜” という感じで、みなさんが好きな恐竜がどんな生物だったのかを知っていただくところからはじまって、福井県立恐竜博物館で研究している標本をもとに少し学術的な紹介、そして「はちたま」ではスピノサウルスの実物大ロボットを展示して、恐竜の偉大さを知っていただくような構成になっています。

要所要所に注目していただきたいところはありますが、福井県立恐竜博物館の研究員がどんな研究をしているのかには注目していただきたいですね。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

子どもたちに大人気の「ティラノサウルス」。その頭骨(後期白亜紀)も展示!

ー スピノサウルスの実物化石の展示や実物大ロボットがあったり、スピノサウルスがメインですね。

スピノサウルスは映画「ジュラシック・パーク」シリーズの2作目「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(劇場公開1997年7月)にも登場しティラノサウルスと戦っていますが、当時は陸上の動物と考えられていました。しかし数年前の研究で主に水の中で生活する半水生ということがわかり、そのイメージが大きく変わりました。

またスピノサウルスの実物大ロボットは世界初展示です。全長約15メートルもある大きなもので、「はちたま」に展示することで背景とも相まってまるで空中を泳いでいるような姿が見られるので、そのスケールの大きさを感じながら、最新の研究も楽しんでいただければと思っています。

【参考(レポート)】史上最大の肉食恐竜スピノサウルスとティラノサウルスが夢の競演!「恐竜博 2016」に行ってきた!

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

スピノサウルスが「はちたま」に降臨!「オダイバ恐竜博覧会」のために開発された全長約15メートルのライフサイズのスピノサウルスのロボットは世界初公開! 泳いでいる姿を躍動感のあるポーズで再現し、その姿はスピノサウルスが生きていた様子を彷彿とさせます。まさに実物大の迫力! ©︎ココロ

絶滅している恐竜の動きや声
研究者はどのように再現している?

ー スピノサウルスのロボットは本物のような動きを再現しているそうですが、本物の動きはどのようにしてわかるのでしょうか?

研究者は化石からすべてを推測しているので “本物のような” とは言えないのですが、単なる想像ではありません。たとえばスピノサウルスの場合、頭骨の化石がたくさん見つかっていて、そこからワニに似た習性が考えられますし、関節や手足の骨格からはある程度の動き方は推測できるので、そこからスピノサウルスの動きを再現しようとしています。半水生の恐竜ということがわかってからは、ワニに近いスタイルでの表現になっていると思っています。

しかし本当の動きはわからないので、スピノサウルスが半水生の恐竜だったという論文が出たあとに、それに反論する “骨格の特徴から考えて完全な陸生ではないか” という論文も出ているので、研究者が何を根拠にどのような科学的な仮説を立てて考えているかによって、復元も大きく変わります。私たちは今回、半水生スタイルを採用し、その姿でスピノサウルスを復元したということになります。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

スピノサウルス頭骨復元模型

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

スピノサウルス顎骨(実物/1億〜9000万年前)。スピノサウルスはワニに似た頭をした謎の多い恐竜で、その貴重な未公開の実物化石も特別に展示! スピノサウルスのリアルを体感し、その謎に迫ってみよう!

ー 小型のティラノサウルスのロボットも展示されますが、声は出るのでしょうか? 以前、恐竜の声帯から考えると映画で観るような恐ろしい声は出せなかったのではないか、と聞いたことがあります。恐竜の声についての最新の研究結果の紹介もあるでしょうか?

実は一番難しいのが声なんです。福井駅の前にも恐竜ロボットがあり鳴いていますが、実は、恐竜のなき声はまだわかっていません。

恐竜は鳥の祖先なので、鳥のような鳴き声を出せたんじゃないかと考えることもありますが、鳥は鳴き声を出すための特別な発声器官 “鳴管(めいかん)” を持っているので、あのような多様な鳴き声を出すことができるんです。ですが、恐竜にその証拠は見つかっていないんです。

最近、日本人研究者が、アメリカの博物館に収蔵されている恐竜の化石の喉の位置に鳴き声を出す器官の痕跡を発見しました。そのような化石がたくさん見つかり出すと、恐竜が出していた音について明らかになってくると思います。

ただ、現時点では他の研究者が推測するように、恐竜映画のように大きく口を開けて「ガオー」と鳴くようなものではなかったのではないかと思います。恐竜と近い関係のワニも声は出しませんが、喉の奥で空気を震わせるような感じで音を鳴らすことはするので、恐竜も同じように口を閉じて空気を震わせるような音は出したんだろうと考えられます。

また植物食の恐竜で頭にトサカがある「パラサウロロフス」のような恐竜たちは、声ではありませんが、そこで音を鳴らせたと言われています。

ー 確かにワニの鳴き声って聞いたことがないですね。

声は出しませんが音は出すので、実際の恐竜もそのようなイメージかなと思います。ただ、恐竜としての一般的なイメージでは、やはり吠える必要がありますよね。ロボットにはそうしてもらっていますが(笑)。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

恐竜ロボットには迫力ある声が欠かせませんが、実際の声についてはまだよくわかっていません

恐竜研究は実物を見られないから楽しい!?
知識が増えると生きている恐竜が見えてくる

ー 恐竜の研究をしていると、“生きている恐竜を見られない、触れない” というもどかしさはありますか? 以前、宇宙の研究をされている方はそのもどかしさがあるとおっしゃっていました。

恐竜は現在、見ることはできません。でもそこが “楽しい” ところなんですよね。もし生きている恐竜を見られたら、それは感動すると思いますが、古生物学者としては楽しみが減ってしまいますね。

古生物の研究は、“探偵のような仕事” と表現される方もいます。いろいろなデータや証拠を集めて、そこから論理づけて自分が提唱する恐竜に対する仮説を立て、この恐竜はこういう生活をしていたなどと議論しながらより正確に近いであろう恐竜像に迫るのが、古生物研究の楽しいところなんじゃないかなと思います。

ー 謎解きのような楽しさ、想像する楽しさがあるんですね。

科学的な証拠をもとに想像し、それを明らかにするために発掘をして新しい証拠を見つけたい。そのためにいろいろな場所を発掘して、というのが楽しいところですね。発見により欠けたピースを埋めながら研究は進んでいき、今の子どもたちが将来、新たな恐竜像を我々に示してくれる。そんなことを期待しています。

そして恐竜に対する知識が増えると、自分の中でその恐竜を見られるようになるんです。それが恐竜を勉強している人たちの特権であり、古生物の研究のおもしろさだと思います。そのような楽しみ方を共有できれば良いですね。

骨をひとつだけ見ても全体のイメージはつきませんが、そこに残された噛まれた跡や怪我が治った跡などを観察したり、足跡が保存されている地層の上に立ったりすると、生きていた時の恐竜の姿がリアルに思い浮かぶので、非常にワクワクします。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

展示室に骨格しかなくても恐竜を楽しむことができます。少しでも恐竜について知っていると、骨格から生きていた頃の恐竜をイメージすることができるのです。その知識を少しずつ増やしていくと、また違った姿が見えてきます

ー 「オダイバ恐竜博覧会」では恐竜についての最新の研究結果も見られます。今回紹介していただける最新の研究結果はどのようなものになるでしょうか?

ひとつは福井県立恐竜博物館が2023年9月に発表した日本の一番新しい恐竜「ティラノミムス」。複製を展示し、紹介します。もうひとつはスピノサウルスが半水生ではなく陸生だったという反対意見も取り入れながら、新しい研究をもとにした恐竜像を紹介します。

ー 反対意見も紹介するのはおもしろいですね。親子で「どっちだと思う?」という会話が生まれそうです。

恐竜研究ってそういうものなんですね。何か新しい提案がなされると、それに対して必ず反対意見が出てきます。それに惑わされずに、自分はどういう根拠でどちらの説を支持するのかが重要です。

海外の博物館などで来館者の様子を見ていると、親が子どもに質問したり、子どもが親に聞いてパネルを読んでもらっているという風景をよく見かけます。この「オダイバ恐竜博覧会」も、親子で見に来て、いろいろな議論をしてもらいたいと思っています。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

ティラノミムス・フクイエンシス(復元イメージ)

恐竜好きなら答えを知りたい!
恐竜絶滅の原因とは?

ー 恐竜に関する展覧会の取材をするたびに鳥が恐竜の子孫だった、恐竜に羽毛があった、色がわかってきたなど驚くような研究結果を目の当たりにして、日々、恐竜研究は進歩しているのを実感します。最近では6600万年前の隕石の衝突は南半球ではあまり影響がなく、隕石衝突後も恐竜は絶滅せず生きていたという説もあるようです。そうなるとなぜ恐竜絶滅が起きたのか、多くの方が興味を持っている恐竜の絶滅について、先生はどのようにお考えですか?

やはり今ある証拠からは、隕石の衝突が一番確実な恐竜の絶滅に影響を与えた大きな自然現象だったであろうとは思います。そしてそれにともなう環境の変化、隕石の衝突後インドの方では火山活動が活発になっていたという証拠もあり、その影響で、地球の環境が大きく変わり、恐竜時代に繁栄していた恐竜を含む大型爬虫類が絶滅してしまったのだと思います。

でも、これもわからないんですよね(笑)。絶滅しているものとしていないものがいますから。それらを解決できる証拠はまだ見つかっていません。恐竜は大型のものが多かったので環境変化に耐えられなかったと言われますが、小型の恐竜もいるので、やはり一言では説明できません。

粘った者勝ち? 恐竜研究者になるには?
子どもたちが今やっておくと良いこととは?

ー 恐竜好きの子どもがたくさんいます。そういう子どもたちが将来恐竜に関する仕事で食べていく道はありますか? 先生はモンタナ州立大学で勉強中に「チャンスがあるなら就職しなさい」という助言で帰国し福井県立恐竜博物館に就職されましたが、研究で食べていくのはそれだけチャンスが少なく、恐竜1本で生活を支えるのは大変ということでしょうか?

研究での就職口は非常に少ないんですよね。でも、ゼロではないんです。我々のまわりでも学生の頃から化石や古生物関係で顔をあわせていたような人たちも、今では、博物館や大学などで専門的な仕事につけている人が多くいます。もちろん途中であきらめる方もいるし違う道に進む方もいます。だから “粘れ” と言うわけではありませんが、まわりを見ても “あきらめない” というのも大事だと思います。

研究職ですので、20代後半ぐらいまでなかなか就職できないような世界ではありますが、恐竜に限らず他のことでも、自分が本当にやりたいと思うことがあるなら、それに一生懸命に取り組んでいれば、なぜかいつか必ずチャンスは巡ってきます。その姿を見てくれている人がいて、チャンスを与えてくれるタイミングは絶対に来ると思っています。確かに恐竜の研究者で食べていくのは簡単ではありませんが、私が言えるのは “あきらめたらおしまい” ということかなと思います。

とはいうものの、ある程度で見切りをつけるのも大事ではあるのですがね。

ー 今、小学生のお子さんが将来恐竜の研究者になりたいと考えているとしたら、どんなことを勉強したらいいでしょうか? 勉強だけに限らず、先生の経験から役に立っていることがあれば教えてください。

私は恐竜図鑑を片手に博物館をまわるような熱心な恐竜っ子ではなかったので言えることは本当に一般的なことですが、恐竜を研究していて思うのは、日本だけではどうにもならないし、自分ひとりではできないんですよね。いろいろな人の協力やアドバイス、そういうものがあってようやく研究ができる、共同で活動することによって研究が進むという分野なんです。

先週中国に行っていたんですが、中国の研究者や博物館の方と議論をしながら、そこにある化石を研究させていただくとか、そういうことはよくあります。だから僕が親御さんに言えるのは、お子さん自身が積極的に行動し、コミュニケーションをとることができるようになっているのが、一番良いことだと思います。

人と一緒に何かをやっていく、人が困っていたら手伝うという、共同でいろいろな作業ができるということを自然にできるように身につけておくのが一番重要だと思うので、まずは学校生活をしっかり送っていただきたいですね。

ー 博物館などから化石を借りるのもコミュニケーションや信頼が必要と聞いたことがあります。研究者の方というと研究室に篭ってひとりで研究に没頭しているというイメージがありますが、そうではなく、たくさんの方と関わっていかないと研究が進まないんですね。

発掘現場では外国人の方と一緒に発掘ができることで研究が一層進みます。言葉の問題、文化の違いもありますが、それを受け入れながら上手に発掘調査を進めていかなければならないので、コミュニケーションというのは非常に重要なツールだと思います。

もちろん恐竜の知識、研究のセンスも重要ですが、それだけではないと思います。第一線で活躍されている有名な国内外の研究者の方々は、私たちが話しかけても気軽に受け入れてくれるし、いろいろなアドバイスもしてくれます。

ただ、いろいろ言いましたが、研究はこれだけではありません。研究トピックは非常に多様です。たとえ今、学校に行けなくても、コミュニケーションをとることが苦手だとしても、決して恐竜研究者になれないわけではありません。自分の性格にあった研究テーマは必ずあります。お子さんの性格にあった得意分野に目を向けて進んでいくことも重要なことですね。

ー 親は子どもの “恐竜の研究者になりたい” という夢を応援するためにできることはありますか?

お子さん自身が勇気を出して一歩踏み出せるよう背中を押してあげることと、積極的に自分でいろいろなことができる環境をつくってあげることが重要だと思います。親御さんががんばってお膳立てしてしまうことがありますが、ある程度までで我慢し、お子さんが少しでも自分で “成し遂げる” 状況をつくってあげてください。

10年以上この仕事をしていますが、私に積極的に話しかけに来てくれた子の中には、何かどこかで、研究をしている人がいます。また同じ研究者同士で話してみても、みんな自分で動いていた人たちばかりですね。いつか、自分のタイミングで自分の夢に向かってつき進めるようになれば良いですね。

オダイバ恐竜博覧会2024 監修統括 柴田正輝先生の写真

粘るか、あきらめるかの判断はなかなか難しいですが、「一生懸命に取り組んでいれば、なぜかいつか必ずチャンスは巡ってきます」という柴田先生の言葉には勇気づけられます

ー 先生がイグアノドン類の研究を主としているのは、何かきっかけがあったのでしょうか? 研究者の方にお話をお伺いすると、研究対象は自らの意思や好きなものというよりも、偶然の要素が強いことが多いと感じています。

恐竜などの古生物学では、やはり研究テーマとの出会いは重要です。自分のやりたい “化石” がいつもあるわけではありません。私の場合、福井県立恐竜博物館に就職したときは、まだ福井県で発見されていた恐竜は少なく、フクイラプトルなど肉食恐竜の研究者はすでに博物館にいました。ですが、「フクイサウルス」(イグアノドン類)を研究していた人はいませんでした。また、この種類の恐竜化石は、発掘現場からたくさん出てきていたので、自然と私のテーマはそちらの方になっていきました。

自分が興味のある化石や研究トピックは、もちろん個々に持っていると思います。ただ、やりたいことが必ずしもできるものではありません。どんなネタ、つまり化石があるのかということなので、そのときの状況で、今までは予想もしていなかった分野に進んでいくというのはよくあることだと思います。

しかし、調べていくとどんな研究でも楽しいですし、わからないことが多いことに気づきます。そこで自分のオリジナリティが出せるか、見つけられるのか、深めていけるのか。そこが重要なのかもしれませんね。

ー 先生が今一番知りたいことは何ですか?

たくさんあるんですが、大きなテーマのひとつは、私の専門はイグアノドン類で、その中の「フクイサウルス」という福井県で発見された恐竜です。イグアノドン類という恐竜は白亜紀に世界的に広がっていた植物食恐竜ですが、フクイサウルスは他の種類と比べあごの構造が変わっていることがわかっています。ただ、なぜそのような構造を持っていたのか、どのような機能があったのかはわかっていません。おそらく、その当時の環境と密接に関わっているのだと思いますが、このようなこと全般を解明したいですね。

― 研究者になるのに一番苦労したことは何ですか?

あまり苦労してないと思いますね(笑)。私の場合は他の研究者の方々とは違い遠回りをしたので、モンタナ州立大学へも奨学金ではなく、自分でお金を貯めて行きましたし、親からの支援もなかったので側から見れば非常に貧しい生活を送っていたとは思います。でもやりたいことはできていたし、その中でいろいろな人と出会って化石に関するさまざまな経験をさせてもらったので、非常に恵まれた環境だったと思っています。

一般的には20代後半でも定職についていたわけではなかったので、苦労しているように見えたかもしれませんが、本人としては、やりたいことをやれていたので、苦労した感じはまったくないんですね(笑)。

ー 先生の研究のゴールというのはありますか?

今、私は大学でも教員として院生に教えているので、一緒に勉強や研究をしてきた学生が就職したり研究者になってくれたり、研究で良い成果を残してくれたりという学生さんの成果一つひとつが日々の私のゴールなのかなと思います。

そして福井県立恐竜博物館でも今回の「オダイバ恐竜博覧会」のような特別展は行いますし、福井県立恐竜博物館での展示にも携わっているので、それらを通して恐竜研究の道に進んでくれるお子さんがひとりでもいて、大人になったときに「あのときの展示を見ました」なんて言ってくれるのも、ひとつのゴールですね。

しかし研究自体にゴールはないですね。満足できる結果というのはないと思います。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

「次から次へと謎が出てくるので、研究自体にゴールはありません」と柴田先生。しかし教え子の成長や展覧会を通して子どもたちの恐竜への興味・関心のきっかけづくりなど、たくさんのゴールをお持ちでした

化石発掘体験や興味ある研究に触れて
一歩先の恐竜の勉強に進むきっかけに

ー 恐竜が好きな子どもたちはたくさんいます。“かっこいい” と興味を持つことだけでも大切なことだと思いますが、子どもたちには今回の「オダイバ恐竜博覧会」からどんなことを学んでほしいですか?

まだ恐竜に興味のない子どもたちには、恐竜に興味をもつきっかけにしてもらいたいですね。今回はティラノサウルスの実物大のロボットもあるし、球体展望室「はちたま」ではスピノサウルスのロボットも展示するので、恐竜っておもしろいと思ってほしいですね。

恐竜に詳しくて、もう一歩踏み込んで恐竜について知りたい子どもたちは、22階の福井県立恐竜博物館の研究員の研究を見てください。私は鳥脚類という植物を食べる恐竜の研究をしていますが、獣脚類という大型の肉食恐竜の研究、足跡、脳の研究もあります。そこから自分が興味のある研究に触れて、一歩先の恐竜の勉強に進むきっかけになればと思います。そして “恐竜の研究” と言っても、いろいろな種類があるということも知ってもらえると嬉しいですね。

ー 体験イベントでは化石発掘体験ができるそうですね。

福井県立恐竜博物館ではタイでも発掘調査を行なっています。その共同調査先の特別な計らいで、私たちがタイで実際に恐竜化石を発掘している岩石を持って来て、恐竜化石を発掘する体験ができるイベントを計画しています。タイに行かなければできない体験を、このお台場で楽しめるように準備しています。

みなさんがイメージしている発掘は、ハケやブラシで地層を掃いていると恐竜の骨が出てくるようなものだと思いますが、実際にはそのような現場だけではありません。新しい発見をするためにはどのような努力が必要で、どのような調査をしているのか、体感しいただきたいです。発掘したものを持ち帰ることはできないんですが、恐竜時代のワニの歯や魚の化石、ひょっとすると肉食恐竜の歯の化石なども見つかる可能性のある岩石が準備されています。週末がメインのイベントになると思いますが、ぜひ参加していただきたいと思っています。

オダイバ恐竜博覧会2024の画像

実際のタイの発掘現場から持ってきた岩石を叩いて恐竜化石の発掘を体験できます。化石を見つけたら福井県立恐竜博物館の研究員から詳しい解説を聞くことができる貴重な機会です(別途料金が必要です)

ー 親子で「オダイバ恐竜博覧会」を見たら、どんな会話をするといいでしょうか?

展示を見た中でどの恐竜がおもしろかった、好きだった、どの展示が良かったかを、親御さんはお子さんに聞いていただき、お子さんがどんなことに気がついて、どんなことに興味を持ったかを感じとっていただければと思います。親御さんが恐竜について知らなくてもまったく問題ありません。ご一緒に勉強してください。

恐竜という生物に興味を持つ子もいれば、恐竜の復元に興味を持つ子もいるし、恐竜の脳の分析方法に興味を持つ子もいるかもしれません。お子さんの小さな気づき、興味に気がついていただければと思います。

そして「新幹線で福井県、福井県立恐竜博物館にも行ってみようか」という話もしていただきたいですね(笑)。福井県立恐竜博物館は2023年にリニューアルをして展示も体験施設も増えていますし、3月には北陸新幹線「かがやき」が開通し遠方からもアクセスしやすくなります。みなさまの期待を裏切ることのない展示を研究員一同がんばってつくりあげているので、「オダイバ恐竜博覧会」同様、期待して来ていただければと思います。

「オダイバ恐竜博覧会2024 -福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!-」は、2024年3月20日(水・祝)~5月6日(月・振)フジテレビ本社屋で開催!

オダイバ恐竜博覧会2024 監修統括 柴田正輝先生の写真柴田正輝(しばた まさてる)
1975年 兵庫県生まれ。福井県立恐竜博物館 主任研究員・福井県立大学 恐竜学研究所 教授。オダイバ恐竜博覧会監修統括。広島大学大学院理学研究科博士過程前期修了。博士(理学)[東北大学]。福井県立大学恐竜学研究所教授。専門は古脊椎動物学、特に恐竜類。勝山市の発掘現場から産出した鳥脚類を中心に研究。タイや中国で発見されたイグアノドン類の分類学的研究や、福井の恐竜と同じ時代(前期白亜紀)の東アジアにおける恐竜類の分布やその変遷について研究している。

福井県立恐竜博物館
恐竜化石の一大産地である福井県勝山市に建てられた、恐竜を中心とする地質・古生物学博物館。銀色に光るドームの内部にある展示室は「恐竜の世界」「地球の科学」「生命の歴史」の3つのゾーンから構成されている。4,500平方メートルという広大な展示室には50体もの恐竜骨格をはじめとして千数百もの標本の数々、大型復元ジオラマや映像などを見ることができる。子どもから大人まで楽しんで学習できる、また研究者も満足できる学術的に裏付けされた展示をめざしている。
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp

オダイバ恐竜博覧会2024のポスター

2024年3月20日(水・祝)~5月6日(月・振)フジテレビ本社屋で開催!
オダイバ恐竜博覧会2024 -福井から“ヤツラ”が新幹線でやってくる!-

日本最大の恐竜博物館である「福井県立恐竜博物館」が全面協力し、ティラノサウルスやトリケラトプスのような誰でも知っている恐竜から、福井で発掘・発見された恐竜など、姿かたちが多様な恐竜たちを紹介。福井県立恐竜博物館はトリケラトプスやアクロカントサウルスなど大迫力の全身骨格標本およそ20体を展示するとともに、同館の研究から恐竜研究の最前線を知ることができます。さらに日本初公開となるスピノサウルスの化石標本、世界初公開となる全長約15メートルのスピノサウルス実物大ロボットやティラノサウルス実物大ロボットも展示、恐竜の迫力を体感できる展覧会です。
https://www.odaiba-dino2024.jp/

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