2026年9月23日(水・祝)まで東京藝術大学大学美術館で開催!

美術の見方に正解はある? 展示という形で藝大の講義を体験する「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」で、自分なりの美術の見方を身につける!

同展の特別チューターに就任した人気お笑いコンビ「ナイツ」の塙宣之さん(写真左)と土屋伸之さん(写真右)。一足先に展覧会を鑑賞したおふたりの感想や展示の見どころについてのトーク動画はページ下部にあります! ぜひご覧ください!

藝大生になりきって
藝大現役講師陣の講義を通して
自分なりの美術の見方を見つける

東京藝術大学(以下、藝大)に通う藝大生は、大学でどのように美術を学んでいるのでしょうか。そんな好奇心を満たし、美術の見方を学べる展覧会「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」が、2026年7月24日(金)から東京藝術大学大学美術館で開催! 開催前日に行われた内覧会に行ってきました。

同展では、藝大で教鞭を執る教授陣が、学生たちに実際に行なっている講義の内容を展示形式で紹介。教授それぞれの作品の見方に触れながら、自分なりの美術の楽しみ方や見方を見つけることをテーマにしています。

会場には、全12の講義をもとにした展示が並びます。普段は教室で学ぶ内容を、大学美術館の所蔵作品を実際に鑑賞し、ときには体験を交えながら学べます。まるで藝大生になったかのような気分で、自分なりの美術の見方を知るヒントになるでしょう。

展示室には、それぞれの講義のシラバスが記された柱が設置されています。そこには、講義で学べる内容がはっきりと明示されています。ただし、同展の目的は、シラバスに書かれた「正解」を学ぶことではありません。それぞれの視点に触れた上で、自分なりの見方を見つけることこそ、同展の醍醐味です。

本記事では、数ある講義の中からいくつかの展示をピックアップし、子どもも大人も楽しめる同展の見どころをレポートします!

展覧会場の入口で来場者を出迎えるのは、藝大の受験に合格すると配布されるピンクの紙袋
会場では、各展示のエンボス式スタンプを集めながら巡る仕掛けも。スタンプラリー感覚で、子どもも楽しめます
シラバスが書かれた柱

「学ぶ」の語源は「真似ぶ」
真似ることから学びがはじまる

1限目の展示「まねぶ美術館〜模写でよみとく美の手とこころ〜」に足を踏み入れると、まるで海外の美術館のような光景が広がります。壁に掛けられた名画の前にはイーゼルが並び、学生たちが「公開模写」に励んでいます。しかし、学生たちのキャンバスをよく見ると、目の前の作品を忠実に再現しているのではなく、学生自身の解釈や視点が反映されています。

学生による「公開模写」から展覧会が始まります。どのような作品ができあがっていくのか、そのプロセスからも目が離せません

この展示を担当した油画教授・宮本武典氏が学生に求めたのは、見たままを再現することではなく、作品が生まれた時代背景や作者の思いと向き合うことでした。「学ぶ」の語源が「真似ぶ」であるように、模写は学びの原点です。

藝大で受け継がれてきた「模写」という伝統を「作者の心を真似ぶ」という視点から捉え直すことで、模写が単なる技術の習得ではなく、作品を深く理解するための行為であることが見えてきます。




岡倉天心の『茶の本』から
藝大の原点と未来を考える

藝大の前身である東京美術学校の創設に深く関わった岡倉天心。その名は広く知られていますが、彼が世界に向けて何を伝えようとしたのかを知る機会は意外と多くありません。

4限目の展示「岡倉天心『茶の本』を読む」では、同展の総合監修を務める東京藝術大学大学美術館教授・古田亮氏が『茶の本』をひも解きます。1906年にニューヨークで出版された『茶の本』は、茶の湯を通して日本人の美意識や芸術観を世界へ伝えた一冊です。

刊行120年という節目を機に、改めてその思想を現代の視点から紹介しています。さらに注目したいのが、この古典が現代の創作へとつながる展示です。

工芸科教授・三上亮氏が『茶の本』を再解釈して制作した茶碗の作品も展示されています。「もし自分ならどんな作品を作るだろう」と想像を巡らせながら鑑賞すると、展示がより深みを増すでしょう。

岡倉天心著『茶の本』
工芸科教授・三上亮氏が『茶の本』を再解釈して制作した茶碗の作品

「かわいい」の先にある気づきを
自分の言葉で表現する

同展では、作品を鑑賞するだけでなく、来場者自身が参加できる体験型の展示も充実しています。7限目の展示「藝大美術館に住む動物たち」は、先日の総合監修 古田亮先生へのインタビューで子どもたちにおすすめしていた展示で、デザイン専攻・丸山素直氏が担当しました。健野壮太による大きなシロクマの彫刻作品『polka dots』が来場者を出迎え、動物を題材とした絵画や彫刻作品が並びます。

時代や分野が異なる作品をじっくりと眺めていると、動物たちの表情やしぐさ、デフォルメされた形から、作家の個性や表現の違いが見えてきます。作品の横には、鑑賞のヒントとなる言葉が添えられており、それをきっかけに感じたことを付箋に書いて貼ることができます。

「かわいい」で終わらせるのではなく、「なぜそう感じたのか」と自分の言葉で表現してみると、作品との距離がぐっと縮まるでしょう。

健野壮太『polka dots』(2007年)
付箋に書かれた感想から、他の見方に触れられます
子どもでも読める低い位置に添えられたテキスト
小倉遊亀『径』(1966年)

AI解析で自分なりの
「見方」の傾向を知る

続く8限目は、2022年に藝大が創設した東京藝術大学未来創造継承センターの田口智子氏と倪雪氏による「見て、触れて、言葉にして」。創作のプロセスや記録までを「芸術資源」として捉える同センターならではの視点から、美術鑑賞の新たな方法を提案する展示です。

会場では、VRゴーグルを使って作品の3D映像を鑑賞し、同時に作品のレプリカに触れることで、「見る」「触れる」「言葉にする」といった複数のステップで作品と向き合います。

VRゴーグルを使って作品の3D映像を鑑賞。残念ながら内覧会では、まだ体験することができませんでした


さらに、QRコードから体験できる「藝大式“ミカタ” タイプ診断」では、作品について入力した言葉をAIが分析。自分がどのような視点で作品を鑑賞する傾向があるのかを知ることができます。

「藝大式“ミカタ”タイプ診断」に感想を入力すると、自分の見方の傾向がわかります
藝大式”ミカタ”タイプ診断結果の一例

「展示して終わり」ではない
参加しながら学ぶ
藝大美術館の新たな試み

開催前のプレス内覧会で古田氏は、一般的な展覧会は、作品を選び、展示し、説明して終わるものだとしたうえで、これはそうではない展覧会だと説明。夏休み企画でもある同展では、子どもや若い世代が作品をどのように見て、どのような体験や気づきを持ち帰るのかを重視していると語りました。

同展の総合監督を担当した東京藝術大学大学美術館教授・古田亮氏
9限目「大正〜昭和初期 東京の文化的変容」の展示風景

動画あり! ナイツが体験!
笑いを交えながら伝える
「藝大生になる」おもしろさ

前日に行われた報道内覧会には、同展の特別チューターに選ばれた人気お笑いコンビ「ナイツ」の2人も登場しました。実は、塙宣之さんは藝大出身の叔父を持ち、土屋伸之さんは2年間予備校に通った末、2026年に47歳で日本大学藝術学部美術学科へ入学するなど、2人は美術と無縁ではありません。

一足先に展覧会を鑑賞した2人は、漫才を交えながら独自の視点でその魅力を語りました。土屋さんが特に印象に残った展示に挙げたのは、現役藝大生が名画の模写に取り組む様子を公開する1限目「まねぶ美術館〜模写でよみとく美の手とこころ〜」と、仏像の内部構造や模刻技術を紹介する6限目「模刻から学ぶ仏像の保存修復」。完成した作品だけではなく、制作の過程や技術に触れられる点に魅力を感じたと話しました。

仏像の中身を知ると、構造がよくわかる

また、7限目の作品を見て感じたことを言葉にする体験にも参加。「自分の感性に気付くことができる」と、来場者自身が参加しながら楽しめる同展ならではの魅力を語りました。

最後に土屋さんは、「『藝大生になれる』というのが一番の魅力。実際に藝大の授業を受けているような体験ができました」とコメント。塙さんも「美術は実際に足を運んで、生で見ることが大切。家族で来て楽しんでほしいですね」と展覧会への来場を促しました。

展覧会「藝大式 美術の“ミカタ”―この夏、藝大生になる―」特別チューター「ナイツ」による見どころトーク

同展では、作品の感想を実際に考え、言葉にすることでそれぞれが自分なりの「美術の見方」を発見することをめざしています。そして、“作品の見方は自由なんだ” ということも感じられました。自分自身の感性を通して美術と出会う。そんな、これからの美術館の在り方が感じられる展覧会です。

2026年から2028年にかけて開催される3年連続プロジェクトの第1弾となる同展。藝大で教える教授自らが展示内容を考案した大学美術館にとっても新たな試みです。

作品との対話を通じて自分だけの「ミカタ」を見つけてみてください。

TEXT:星野薫