
なぜ今、科博で “性” を取りあげるのか?
子どもたちに “性” のことをどう伝える?
国立科学博物館として初めて “性” をテーマにした特別展「生きものたちの性」が、2026年10月31日(土)から開催中! 開催前日に行われたオープニングイベントには、本展を監修した研究者の先生方、そしてオフィシャルアンバサダーを務めるお笑いコンビ「ラランド」のサーヤさんとニシダさんが登場し、“性” をテーマにした理由、本展の見どころなどを紹介しました。

総合監修の堤千絵先生(国立科学博物館 植物研究部 多様性解析・保全グループ研究主幹)は、「展示をつくりながら『なぜ今までこうした展覧会をやってこなかったのだろう』と思うほど、生きものの性は多様で魅力にあふれていました。生殖行為などの直接的なコーナーはごく一部で、全体としては “生きものはどのように命をつないでいるのか” ということを、多様な切り口で構成しています」と紹介。
そして、「もしお子さんと見るのに少し緊張してしまう場合は、生殖器などのエリアはサッと通り過ぎても大丈夫です。全般的にはいろいろな性の仕組みを紹介していて、子どもや親子でも楽しめるようめざして準備しました。そして、来館前や展覧会を楽しんだあとに親子で図鑑や絵本をめくったり、『他の生きものはどうなんだろう?』と話しあったりする良いきっかけにしてもらえたら」と、親御さんへの温かいアドバイスも送られました。

同じく総合監修の篠田謙一先生(国立科学博物館 顧問)は、「社会的に性の話題は会話や議論がしづらい状況にあり、また学校教育では人間の性が中心になりがちです。しかし、人間は地球上の多様な性のほんの一例に過ぎません。生きもの全体の多様な性を見ることで、フラットに会話ができるきっかけにしてほしい」と語られました。

アンバサダー・ラランドが登壇!
爆笑トークで会場が大盛りあがり!
オフィシャルアンバサダーを務めるお笑いコンビ「ラランド」のサーヤさんとニシダさんも登場し、見どころをアピール。
幼い頃から科博に通っていてアンバサダー就任は夢だったというサーヤさんは、「 “性” という文字だけを見ると気構えてしまうかもしれないけれど、会場の中に入ると本当に神秘的でおもしろい! 体の部位でオスメスが混在する『ギナンドロモルフ』の響きがかっこよすぎて、次に改名するなら絶対『ギナンドロモルフ』にしたい!」と語り会場を沸かせました。


「人生最初で最後のアンバサダーになる覚悟でやっています!」というニシダさんは、「人間で唯一ハーレムをつくるタイプの種として展示にあっている」とアピール。さらに「太っている男性が好きな女性のシェアを100%とろうというのが、僕の生存戦略です!」と語り、大爆笑となりました。
深海にはオスがメスに取り込まれるように融合して生きるビワアンコウという生物がいますが、サーヤさんから「ヒモ体質のニシダにそっくり」と突っ込まれると、ニシダさんが「寄生してない! 彼女の家に家賃を払わず上がり込んでるだけ!」と即座に反論する一幕もありました。


オスとメスだけじゃない!
常識を覆す
「性のすがた」と「体の特徴」
子どもに “性” のことをどう説明すればいいのか迷う‥‥と、今回の特別展を躊躇っている親御さんも多いかもしれません。しかし、会場に一歩足を踏み入れると広がるのは、生きものたちが過酷な自然界で子孫を残すために独自に進化させてきた驚くべき “命の戦略” と “多様な生き方” の物語です。それらを300点以上という圧倒的なスケールで、私たちの常識を大きく揺さぶる生きものたちの姿で紹介しています。
私たちは性別は「生まれたときから決まっている」と思いがちですが、生きもののなかには成長の途中で性別が変わる「性転換」、オスとメスの区別がない「雌雄同体」、そしてひとつの体にオスとメス両方の特徴・細胞が混在する「ギナンドロモルフ(雌雄モザイク)」というものもあり、遺伝子や発生のメカニズムによって性別には不思議なことが起こることを紹介しています。
ディズニー&ピクサー映画『ファインディングニモ』のカクレクマノミが性転換をする生きものであることはよく知られています。会場でも映像で紹介していますが、カクレクマノミは「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」という環境に応じて性別が変わるユニークな生態を持っています。集団の中で一番大きな個体がメスになり、2番目に大きい個体がオスに、そしてそれ以外の小さな個体はオスでもメスでもない未成熟という状態です。
つまり生物学的な事実をベースにすると、映画のように「お父さん(マーリン)」と「息子(ニモ)」という関係のまま2匹だけで一緒に暮らし続けることはありません。もちろん映画は素晴らしく、そこを突っ込む意図はありません。話のきっかけとして、とてもおもしろいですよね。

そしてこのように性別が変わる魚は日本の近くの海にもたくさんいて、会場でもベラの仲間であるコブダイが紹介されています。コブダイはカクレクマノミとは真逆の「雌性先熟(しせいせんじゅく)」で、最初はすべてメスとして生まれて卵を産みますが、群れの中でもっとも大きく成長した1匹だけがオスへと性転換します。そしてどちらも一度性転換したら、もとの性別には戻れません。

個人的には、カキフライなどでよく食べられている真牡蠣(マガキ)が性転換する生きものであることを今回の特別展で初めて知って驚きました。そして真牡蠣はカクレクマノミやコブダイとは異なり、毎年、性別をリセットして選び直すことができます。厳密には環境に応じて可逆的な性転換を行う雌雄同体となります。

また、その見た目から「現代の恐竜」と呼ばれることがあるコモドオオトカゲ※は、オスがいないときはメスだけで子どもを産める単為生殖に切り替わる「条件的単為生殖」の生物であることも初めて知り、会場でひとり「そうだったんだ!」なんてテンション爆あがり! 身近にいたり、よく見聞きする生きものの性別に関することだけでもこんなにも種類があり、知らないことだらけ、さらにその生態に至った理由を知ると、生きものって本当に素晴らしく奥が深いと感じます。
※生物学的には恐竜ではありません

実は植物にも性がある!
身近な「バナナ」の
知られざる不思議
赤ちゃんが産まれる仕組みについて「おしべとめしべ」というオブラートに包んだ例えが使われますが、それは私たちが植物に「性」をそれほど意識していないからこそ成り立つ表現です。しかし、実際には植物の花も命をつなぐための生殖器官であり、そこには動物に負けない多様な性の世界が広がっています。
総合監修の堤千絵先生が教えてくださった、私たちが普段何気なく食べているとても身近な果物のバナナも、実は性の仕組みや増え方に知られざる秘密がたくさん隠されています。大人も子どもも「へぇ〜!」と声が出るような発見に満ちています!


今回の特別展は名称に “性” とはあるものの、前々回の「超危険生物展」(2026年3月〜6月)や前回の「いきもの超ワールド展」(2026年7月〜10月)でも “いきものの生存戦略” “子孫を残すこと” を取りあげていましたが、根底には同じ “いきものの生存” という一連のテーマ、流れを感じました。
そして、子どもと一緒にスーパーマーケットなどに晩ご飯の買い物に行った際に、そこに並んでいる魚、野菜には、それぞれ固有の生存戦略があり、陳列されている商品を見ながら、今までとは異なる話ができそうです。
昆虫好きの子どもたちにはおすすめ!
サーヤさん絶賛のギナンドロモルフは
自然界の驚くべき性の多様性のひとつ
ひとつの体にオスとメス両方の細胞・特徴が混在する「ギナンドロモルフ(雌雄モザイク)」も見どころのひとつ。
ギナンドロモルフが発生する詳しいメカニズムは会場内の解説や公式図録に譲りますが、その背景には昆虫類や鳥類ならではの性の決まり方があります。
哺乳類のように全身をめぐる「性ホルモン」が性を決定するのではなく、体をつくる細胞ひとつひとつが自分でオスかメスかを決定する「細胞自律性性決定」が大きな役割を果たしているため、こうした現象が起こります。
受精や細胞分裂の初期に偶然のズレが生じることで、ある部分にはオスの細胞が、別の部分にはメスの細胞がそのまま育ち、左右や部位ごとにオスとメスの特徴が混在したモザイク状の個体が誕生するのです。
ギナンドロモルフは通常の性の決定プロセスとは異なる特殊なメカニズム(受精の初期における細胞分裂のエラーなど)で起こりますが、病的な異常ではなく、自然界の昆虫(チョウやカブトムシなど)や一部の鳥類において、一定の確率で「ひとつの個体」として発生し、命をつないでいる現象です。
そのためエラーというよりは “性の決まり方のバリエーション” のひとつとして捉えられており、単に異常と片付けるのではなく、自然界の驚くべき性の多様性を示す不思議な現象として紹介されています。
その姿も不思議なことはもちろん、昆虫や鳥類と私たち哺乳類とでは性別が決まるメカニズム自体が異なること、そしてギナンドロモルフも性の多様性のひとつというのが、新たな気づきでした。
ギナンドロモルフに興味を持ったら、ギナンドロモルフは子孫を残せるのか、その場合、ギナンドロモルフはオスなのかメスなのか、ギナンドロモルフの子孫にはギナンドロモルフが多いのかなど、いろいろと調べてみると、新たな発見がありますよ。


さらに会場には、必ずしもオスの方が体が大きいとは限らないとか、でも、手足やツノが変な形に発達しているのはオスに多く見られる特徴とか、派手なダンスや歌でアピールする求愛行動から命がけの交尾、そして子育ては必ずしもメスだけがするものではないなどなど、これらはすべて「自分の遺伝子を次の世代へ確実につなぐ」ために身につけた、生きものたちのしたたかで愛おしい生存戦略ということを、たくさんの展示とエピソードで紹介しています。






子どもたちも見やすい!
映像・音声・体験&漫画解説の工夫
会場内は、子どもたちが飽きずに楽しめる工夫が凝らされています。特に注目の求愛コーナーでは、まるで自分が生きものから求愛されているかのような体験ができ、総合監修の堤千絵先生も「まさに自分が愛されているような体験ができるイチオシの場所」と語るほど!



生きものの不思議と出会い
会話が生まれる特別展
国立科学博物館 初となる特別展「生きものたちの性」は、“生殖” だけの内容ではなく、生命とは何か、そして命をどうやって次へつないでいるのかという、生きものたちのたくましくも多様な生き方を親子で一緒に考え、会話を深められる展覧会です。きっとたくさんの驚きとワクワクが出会えるはずですし、なぜこんなにもたくさんの性があるのか、この生きものはオスなのかメスなのか、スーパーマーケットで買い物をしながら、親子で話してみてください。
国立科学博物館 初の “性” がテーマの特別展「生きものたちの性」は、2027年2月21日(日)まで開催!








