
子どもと一緒に親子で楽しめる
生き物についての楽しいクイズが満載!
ー 夏休みに実家に帰ったときに『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』を持って行ったんですが、小学1年生の甥っ子が目ざとく見つけて飛びついていました。読めない漢字があってもふりがなを見て読んだり、お父さんにクイズを出したり、とても楽しんでいました。
そういうふうに読んでほしいなと思っていました。私も先日、子役の子が撮影の合間にこの本を読んでくれているのを見て、とてもかわいかったし、“最高!” と思いました。
ー いままでにも昆虫や動物を題材にした書籍、『恋する昆虫図鑑 ムシとヒトの恋愛戦略』『LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方
』『サバイブ(SURVIVE) 強くなければ、生き残れない
』などを書いていますが、いずれも大人向けでした。今回は子ども向けの書籍ですが、この本を書いたきっかけは?
最近は生き物を好きじゃない子が増えているので、子どもの頃に興味を持ったり好きになるのが一番いいと思って、そのとっかかりとして読んでもらい、もっと生き物に触れてほしいなと思って書きました。
私自身、本から知識を得る子どもだったし、子どもがめちゃめちゃ好きで、一番かわいい動物だと思っているので、ずっと子ども向けの本を書きたいと思っていました。でも、子どもに伝わる言葉を使いながら、短い文章でわかるように書くというのは大変でしたね。

ドブネズミの赤ちゃんの成長に感動!
知っていることを、実際に見てみたい!
ー 以前、TBSテレビの「新どうぶつ奇想天外!」でコスタリカのジャングルに行って、生きているプラチナコガネを見て感動のあまり泣いてましたね。
大ファンの昆虫なんです。標本と違って動くといろいろなところに光があたってキラキラして、生きているのが信じられないくらい非現実的な生き物が実際に動いている姿は本当に感動的で、見ていたら涙が出てきました。あまり感情の起伏のない人間なので、自分が泣くことにも、こんなきれいな心を持っているんだって驚きました。

2018年10月8日(月・祝)まで国立科学博物館で開催している特別展「昆虫」で展示
ー いろいろなところに生き物を見に行き、ご自身もたくさん飼っていますが、生き物と接していて、一番楽しいときはどんなときですか?
(篠原さんはインタビュー時点で、クワガタ7種42匹、ゴキブリ3種400〜450匹、タランチュラ8匹、ヤモリ、イモリ、ダンゴムシ、サソリ、ハムスター、文鳥、ドジョウ、アフリカチビネズミ、ドブネズミ、サンショウウオを飼育)
私は情報から入るので、いろいろな本や論文を読んで雑学として知っている知識を、実際に目で見て確認できた瞬間に、“こういうことか!” とテンションが上がります。
ちょうど10日前、飼っているラット(ドブネズミ)に赤ちゃんが大量に生まれて、最初はピンクのタラコみたいなんですが、ちょっとずつ毛が生えていく段階とか、よく見たら少しだけ前歯があって。確かに図鑑では生後4〜5日くらいで柄があるものは皮膚に色がのってくるとか、一週間くらいで毛が生えはじめるとか書いてあるんですが、実際にそれを目にすると “本当だ!” という感動がありますね。

ー チョウやバッタ、クマムシ、アリヅカムシなど、特定の生き物を研究する方がいますが、篠原さんは昆虫に動物、種類もいろいろで幅広いですね。専門家になる人との違いはどんなところですか?
生き物の生態に興味がある人は、比較的幅広くオールマイティな方に進むのかな、と思います。
マニアになってくると、特に昆虫はもう極めるしかなくて、チョウが好きな蝶屋※という人たちがいますが、チョウのなかでもシジミチョウだけとか、ミドリシジミしかとらないとか、この産地のこれだけをとり続けるとか、そうじゃないと深くまで掘り下げて極められないんですよね。
私は糞虫屋※と呼ばれるフンコロガシの仲間を集めていますが、特定の生き物を極めていく方が修羅の道だなと思っています。ひとつを掘り下げていくとまだまだこんなもんじゃ足りないという思いが出てくるので、相当真面目で熱い人しか、専門家のように一種類を極めることはできないと思います。
※蝶屋、糞虫屋
昆虫を趣味とし、特定の分野を専門的に対象としている人たちを○○屋と呼ぶ。チョウ専門の人は「蝶屋」、クワガタ専門の人は「クワガタ屋」など。
ー 糞虫を好きになったきっかけは何ですか?
虫好きはだいたいカブトムシやクワガタなどの甲虫か、チョウやハチかに分かれますが、飼いやすくて、父親も好きだったので甲虫寄りになったのと、私はゲームの「ムシキング」にハマった世代で、どこに行ってもカブトムシやクワガタが売っていたし、図鑑もたくさん出ていて、チョウより甲虫が魅力的に見えた時代というのもありました。
クワガタも累代飼育という、代を重ねていくことで、よりよい個体を育てることにハマったことがあるんですが、オオクワガタなどのちょっと渋い系のクワガタは、体の大きさや大顎が太いとか一定の評価基準があって、それを生み出すには真面目さが要求されるので、掘り下げられる人じゃないとがんばれないんです。
しかし色虫と言われる色がきれいでピカピカしている昆虫は、最終的には “どの色もいいね”、みたいな失敗がないようなところがあって、それでパプアキンイロクワガタやニジイロクワガタを育てはじめて、それにいちばん似ていた糞虫のルリセンチコガネにハマったんです。
糞虫の魅力は、やっぱり糞を食べているのにこんなにきれいに育つんだというギャップにやられて。それで中学3年生くらいから、自分のなかではルリセンチコガネが一番好きな虫かなと思っています。

ネズミの鳴き声の研究から
人間と動物の共存をもう一歩進めたい
ー 今はどんな研究をされているんでしょうか?
今はネズミの笑い声、心地良いときに発する鳴き声の波長をほかのネズミに聞かせることによって、どんな変化が生まれてくるかを調べています。ネズミに限らず、いろいろな動物の環境を良くしたり、人間にも応用できたらいいなと思っています。
ー 昆虫ではなくて動物の研究なんですね。
そうなんです。大学的に昆虫をメインで研究をすることが難しくて。今は昆虫学全体がそうですが、とにかく予算が降りなくて、昆虫の研究だけを続けていくのはなかなか難しいなと思っています。生物系で予算をいただけて研究を続けられるのは分子生物学※とか、それに類する遺伝子系の研究ですね。
ただ学部では昆虫食の研究をしていて、ラット(ドブネズミ)には蜂の子の粉末をエサとして与え、昆虫タンパクがラットの代謝に及ぼす影響などの研究もしています。秋にはラットを使った昆虫食についての学会発表もします。
※分子生物学
生命の仕組みを、生体を構成する分子レベルから解明することを目的とした学問。食べたものがどのようにして栄養となり体をつくり生命を維持するか、またその過程で遺伝子はどのように受け継がれ、また突然変異などによる病気が引き起こされるのかを解明する。
ー ネズミの鳴き声の研究は、今後どんなことに活用されるんですか?
一番やりたいことは動物園の環境エンリッチメント※です。動物園って場所も決まっていて動物の生息地とは異なりますし、スペースにも限りがあり、動物が檻の中で同じところをグルグル歩き回っているのは、ストレスがたまって神経症になっているからなんです。
私は動物園反対派ではなく、小さいときに動物園に行ったことで動物が好きになったということもあるので、鳴き声という介入方法で動物のストレスを軽減できれば、もっと新しい形の動物園ができるのかなと思っています。
動物園に限らず、牧場とか、動物が飼われているところ、家庭のペットでもいいんですが、動物と人間の共存をもう一歩進められるような研究ができればいいなと思っています。
※環境エンリッチメント
飼育動物のストレスを軽減し健康を改善するため、飼育環境に対して行われる工夫。それにより異常行動を減らし、多様な正常な行動を引き出す。

好きになってはいけないのに‥‥
再び別れを経験!?
ー 先ほどラット(ドブネズミ)を飼っているとおっしゃっていましたが、今もたくさんの生き物を飼育するモチベーションは?
種にもよりますが、ラットみたいに懐いてくれると、どんどん可愛いくなって愛情を持つというのもありますが、まだ知らないことがたくさんあるなって、知識として知っていても見ていないことはたくさんありますし、こんなことするんだって予想外のこともあります。ラットは生んだ子どもを私に見せてくれるんですよ。
ー 懐くんですね。
めちゃくちゃ懐きます。ひとり暮らしの犬くらい懐きます。
ー ハムスターは懐かないですよね。
ハムスターは砂漠で単独生活を送っている動物だからというのもありますね。マウスも懐きませんが、ラットはめちゃくちゃ懐いて、家に帰るたびにみんなで私の取り合いをしてくれます。
ー ラットに興味が出てきたのはなぜですか?
実験で使うからですね。ラットってハムスターのしっぽがある版くらいに思っていたのが、すごい懐くんでかわいくなって。それにラットはもっとも研究が進んだ動物のひとつで、妬み嫉みの感情や、仲間の辛さに共感する優しさを持つことがわかっています。小さな生き物ですが、人間と同じような感情を持っていることに魅力を感じてハマりました。
ー 以前、好きになった研究用の生き物を研究に使ってしまい、しばらく落ち込んだことがこともありましたよね?
だからラットは扱いたくなかったんですが、1ヵ月くらい前にラットで研究するという方針が決まって‥‥、私はまた別れを経験するのかと。でも、そもそも寿命が短いので、そのぶん真剣に研究をすれば、ラットもうかばれるかなって思っています。


高校時代、生物の偏差値が “105!”
子どもに興味を持たせるには
ー 篠原かをりさんと言えば、高校時代の生物の偏差値が105もあったそうですね。どうやったら、そういう子どもになるんでしょうか?
興味を持つことで親から褒められていたのがよかったのかなと思います。うちの親は甘いというか単純なところがあって、私が図鑑を読んでいると、それを勉強あつかいして褒めてくれました。
弟が中学受験のときも、今日は歴史の勉強の代わりにゲームの「信長の野望」を1時間やったからセーフみたいな謎の部分もありましたが、なんでも褒めてくれる環境が、いろいろなことに興味を持って好きになるのはいいことなんだと思わせてくれて、そいういう癖がついたのかなって思います。
ー 興味を持ったことは、どのように調べたり覚えたり、何か工夫はしていますか?
子どものときは、やっぱり図鑑で調べることが多かったですね。テレビはほとんど観ませんでしたが、動物系の番組、「ディスカバリーチャンネル」とか「どうぶつ奇想天外!」はよく観ていていました。映像がないと子どもは飽きてしまいますね。
あとは、親がけっこう物知りだったのは大きいですね。一番最初の知識って、やっぱり親からだと思うので、親も一緒に勉強して共通の話題にできるというのが、子どもとしては一番楽しいのかなって思います。
大学に入ってからは本も読みますが、最近は論文が多いです。すぐにアップデートされるんですが、似たような本や論文でも、新しいものには常に新しい情報があります。
ー 論文は英語で書かれているものが多いですか?
英語が多いですね。英語は全然話せませんが、カテゴリさえ決めてしまえば、よく出てくる単語や言葉はわかるので、そんなに辛いことはないです。
TBSテレビの「新どうぶつ奇想天外!」でコスタリカに行ったときも、生き物という共通の話題があるので、外国の研究者の人が話していることはわかりました。でも虫の名前はわからないので、「その虫はメスは幼虫の形のままマユに留まって、オスだけガになってメスのもとを訪れますか?」みたいに生態についての質問をして、「それそれ!」となると、「あ、じゃあミノムシか」とか。
言語を超えた言語というか、共通の話題と知識があるので、そういう意味ではあまり困らないですし、逆に英語の論文を読むために少し英語ができるようになった部分もあります。やっぱりひとつを極めていくと、他の勉強も少しずつ底上げされるのかなって思います。

自分の弱さと強さを認識
計画性と、得意なことで乗り越える!
ー お父さんはとてもユニークな方のようですが、子育てに関して、親御さんは何かポリシーのようなものがあったでしょうか?
とにかく何でもやらせてくれたのと、母親も生き物を怖がらない人で、私が何を触っても嫌がりませんでした。父親はとにかくいろいろなところに連れて行ってくれました。そして、何を言っても肯定されてきたかな、というのはありますね。
ー 生物のようにできるものと、数学のようにできない科目との成績の差が激しかったですよね。そのことについても親御さんは何も言いませんでしたか?
中学からかなりヤバかったんですが、成績表をごまかしてました。だから母親は、ちょっと成績が悪いくらいなのに、なんで年度末になると毎回呼び出されるんだろうって不思議に思っていたみたいです。ちょっとぼんやりしたところのある人で、問題にならなかったのは、うまくごまかすことができていたからですね。父親はなんでもいいと思っていると思います。
母には大学に受かってからネタばらししましたが、いいことがあったあとだから「もういいよ」みたいな。いつもそういう綱渡りで、かろうじてここまで来たって感じです。
ー そういうたくましさは、どこで培われたのでしょうか?
数学があまりにもひどくて、この成績ではさすがにヤバいけど、勉強してもたぶん無理というか、机に向かうこともできなくて。でも研究者になるには、なんとか理数系ができる人に見せかけなきゃいけなくて、クイズと生物をしっかりやるしかないと、そういう計画を立てました。
勉強がダメでも、それに近い能力はいくつかあると思うんです。勉強って、ダメな人はがんばってもできないと思いますが、勉強以外の能力で補えばやっていけるというのは、父親から学んだ気がします。父は自分の欲求を通す圧力だけで世の中を渡っている感じなので、なんとかなるんだなって。
ー お父さんの背中を見てきたんですね。
タイプは似ていると思います。逆に弟は常識人で、反面教師にしたパターンと、そのまま踏襲したパターンって感じですね。
困ったところもありますが、父親なくして私はなかったと思います。こんな感じでもなんとかなるんだなという、人生なんとかなるパターンのひとつを見ていたので、苦手なことに無理矢理取り組んで克服するよりも、得意なことでなんとか乗り越えていこうという考えが身に付いたという感じですね。

誰もがカブトムシではないけれど
生き残っているのは “強さ” の証明
ー 昆虫の研究者の方からお話をお伺いすると、「子どもたちは昆虫から多くのことを学ぶことができる」とおっしゃいます。篠原さんが昆虫や動物、生き物から学んだことは、どんなことですか?
夏になるとカブトムシとクワガタどっちが強いかとか、昆虫の最強決定戦みたいな話がありますが、生き残っているということは、どんなに弱そうに見える昆虫でも、なんらかの強さを持っているんです。
だから自分はカブトムシやクワガタじゃないかもしれないけど、他の力でそれを上回ることができるかもしれないし、生き残っていけるかもしれない。多様性こそが強さなんだということを学びました。
昆虫や動物には人間では思いつかない常識はずれなところがあるんですが、常識を打ち破り、想定できない戦略で生き残っていくというのは、すごくかっこいい生き方だなと思っています。
ー 驚いた戦略にはどんなのがありますか?
ひたすら硬さに特化したクロカタゾウムシは針も刺さらないくらい硬いんですが、硬くし過ぎて飛べなくなりました。
アリジゴクは砂地に巣をつくってアリが罠にかかるのを待つんですが、アリがかからないときはどうするかというと、そのまま餓死します。座して死を待つ、ですね。でも下手に場所を変えるよりも、巣を構えた(覚悟を決めた)あとは運まかせというのは、人生にも通ずるなと思っています。その方法で一定数のアリジゴクが生き残っているので、それもひとつの正解なんですね。
スズメバチのように自分で獲物を狩りに行くタイプもいれば、アリジゴクのように運まかせでひたすら待つというのも、生存率は意外と変わらないなと。強くなるのも、待つのも戦略ですよね。
ー ひとつに決めたらコロコロ変えない方がいいんですか?
変えて成功するものもいるので、どっちでも、自分がそれでよかったと思えればいいんだと思います。

飼いやすくて観察も楽しい昆虫が
生きた虫しか食べない “カマキリ”!?
ー 篠原さんの本を読んだり話を聞くと生き物を飼いたくなると思うんですが、子どもたちが飼いやすい、おすすめの生き物は何ですか? 飼いやすくて、観察しても楽しい昆虫がいたら教えてください。
飼いやすさというと圧倒的にカブトムシ、クワガタですよね。飼育用のものがたくさん売っていますから。ただ、飼っておもしろいなと思うのは、アリとカマキリですね。比較的飼いやすいです。
アリは飼育キットも売っていて、巣の中が外から見えて楽しいです。カビが生えてしまうのでアリマニアの方は不満があるようですが、ひと夏ならそれでも十分だと思います。飼育キットは比較的簡単に自作できるので、そうすればずっと飼って何代にもわたって群れを維持することもできます。
カマキリは筆の毛先に牛乳を含ませたり、楊枝の先にヨーグルトをつけて食べさせることができるので、実は生きた虫をエサにしなくてもいいんですよ。
ー えっ! そうなんですか!?
それを発見したのが小学生なんです。脱皮に失敗したカマキリに水を与えたときに、水が飲めるなら牛乳も飲めて、タンパク質をとれれば生きられるだろうということでやってみたら、牛乳やヨーグルトをエサにできたそうです。
ー 牛乳がタンパク質だということに気づくところがすごいですね。カマキリは何回か飼ったことがありますが、やっぱり生きたエサが大変でした。
虫を食べているところはかわいいですが、安定して供給するのが大変なんですよね。でもカマキリが牛乳やヨーグルトを舐めているところを見ると、哺乳類的な愛着が湧いてきますよ。
ー チョウはスポーツドリンクがエサになりますよね。楊枝で丸まっているストローのような口吻をスッとのばしてスポーツドリンクに誘導してあげると飲みはじめます。でもカマキリはびっくりしました。やってみます。

生き物好きの子どもたちの将来の仕事
研究することも対象も、尽きることなし
ー『サバイブ(SURVIVE) 強くなければ、生き残れない』という本で「フリックフラックスパイダー」というクモの動きが、将来、農業や海底での作業、火星探査機などへの応用も期待されていると書かれていましたが、「バイオミメティクス」にも興味がありますか?
今、研究していることとは少しジャンルが違うので、これから勉強するかどうかはちょっとわかりませんが、すごく好きな分野で、ロマンを感じます。
ー 昆虫好きの子どもたちが将来、昆虫で食べていくにはどんな道があるでしょうか?
今ちょうど、昆虫や動物に関する本がけっこう出ています。私もそうですが、最近のブームは研究者の方が書いた本というよりも、昆虫好きや動物好きが書いた本がたくさん出ているという印象があって、研究はしていなくても、自分の解釈を提供することで食べていくことができるのかなとは思っています。
以前は昆虫好きの人の就職先は殺虫剤の会社しかなくて、昆虫好きが一番、昆虫を殺すことになると言われていましたが、分子生物学などと組み合わせて昆虫食の研究をすれば昆虫と近いところにはいられるし、今あるものと何かを組み合わせて新しいものをつくっていければ、まだまだ可能性はあると思います。
毎年、「まだこんなヤツがいたんだ!」という新種が出てくるうえ、研究の技術も進歩しているので、いろいろなことがわかります。ウンカというバッタに似た跳躍力がすごい虫がいるんですが、数年前、その虫の幼虫の関節に歯車の構造があることがわかりました。それは義足やロボットに活かすことができると考えられています。
人間の歴史が続く限りは昆虫の歴史も続き、新しい昆虫も出てくるので、尽きることはないと思います。これからの子どもたちも安心して研究してほしいなと思います。
※ バイオミメティクス(biomimetics/生物模倣技術)
長い年月を経て進化した生物は優れた機能や体構造を持っており、そこからヒントを得たり、模倣することで新しい技術の開発やものづくりに活かそうとする科学技術。たとえば蚊の口吻を模した痛みの少ない注射針、チョウの構造色からの染料の必要ないさまざまな色のシート、シロアリの蟻塚から空調システムなど、すでに身のまわりで使われているものも多い。
ー 篠原さんの今後の夢、目標を教えてください。
研究も執筆も、話したりすることも、生き物のことを伝えていくうえで大切なことなので、全部をがんばっていれば、生き物のことをよりよく伝えられるかなって思っています。
人間も含めて生き物のことをおもしろく伝えることができたら、研究でも執筆でもなんでもできると思うので、とにかく好きなものを伝えるというのを、なんらかの形で続けていきたいと思っています。
【#子どもたちへ】篠原かをりさんのおすすめを紹介! 子どもたちへのメッセージも! 新型コロナウィルス感染症による臨時休校・外出自粛要請 支援企画
【プレゼント!】篠原かをりさん直筆サイン入り書籍『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』
【昆虫関連インタビュー】
・特別展「昆虫」監修者 野村周平先生
・クマムシ研究者 堀川大樹博士
・探検昆虫学者 西田賢司さん

インタビュー後記
何を聞いても的確に、かつおもしろく、本当にたくさんの話をしてくれました。興味深かったのは、子どものころ、図鑑を読んでいるだけで親御さんから褒められたというところ。親の関心やポジティブな声かけは、やはり子どもの心に響くのかなと感じました。
また篠原さんは「本などから得た知識を実際に見ることができると、とても楽しい」と言っていましたが、2018年8月25日(土)に放送された『FOOT×BRAIN』という番組の『究極のアスリートはこう育てろ…脳科学が教えるコツ!』で、16万人の脳画像をみてきた東北大学の脳のスペシャリスト瀧靖之教授が、まったく同じことを言っていて驚きました。
「能力を伸ばす鍵は “好奇心”。そしてそれを育むには、水族館に行った際に、魚について図鑑で事前に知っているのと、知らないのとでは、子どもたちの興味の示し方がまるで違う。図鑑で知ったうえで本物を見ることで、仮想と現実がつながり、世の中の広さ、奥深さに興味を持つようになる」
さらに瀧教授は「子どもと一緒に親が楽しむ姿を見せることで、子どもたちの興味や好奇心が育まれる」と続けました。
篠原さんも、「親も一緒に勉強して共通の話題にできるというのが、子どもとしては一番楽しいのかなって思います」と言っています。
16万人の脳画像をみて、脳のスペシャリストが導き出した答えと、篠原さんの環境と、実践してきたことがほぼ一緒。そしていまの篠原さんの状況を見ると‥‥、子育てのひとつのヒントが見えると思います。
しかし、極端であることって、やっぱりすごい。極端になれるのは、持って生まれたものなのか、それとも育めるものなのか?
篠原さんのこれからの活躍がとても楽しみです。ぜひまたお話聞かせてください。そして、子育てをするようになったら、人間の生態についても教えてください!
フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ
文藝春秋/1,100円+税
「なぜ動物園のゴリラはうんこを投げるのでしょう?」「タコの心臓はいくつあるでしょう?」「アブラゼミの名前の由来は?」などなど、身近にいたり、動物園、水族館、昆虫館で見られるいきものについての楽しいクイズがたくさん! クイズに答えて解説を読めば、いきものたちのびっくりするほどおもしろい雑学が自然と身につきます。「迷路」や「間違い探し」「かくし絵」など遊びの要素も盛り込まれ、オールカラーのかわいいイラスト満載で、子どもから大人まで一緒に楽しめます。
篠原かをり(しのはら かをり)
学生作家、タレント。1995年生まれ、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科。第10回「出版甲子園」グランプリ受賞企画『恋する昆虫図鑑 ムシとヒトの恋愛戦略』で2015年に作家デビュー。「生物をこよなく愛する理系女子」として、ニッポン放送「篠原かをりのいきいきプラネット」ほか、テレビやラジオで活躍。『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』など、クイズ番組にも多数出演。著書『LIFE 人間が知らない生き方』『サバイブ 強くなければ、生き残れない』(ともに麻生羽呂との共著)も話題。