カマキリは生き餌以外の食べ物で育てられるか? ヨーグルトと鶏肉で飼育!

カマキリ(オオカマキリ)の飼い方

カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
茹でた鶏むね肉を抱えて食べるオオカマキリ(写真:2021年11月5日)

長年の夢? 40年ぶりに
カマキリの飼育に再挑戦!

生き物しか食べないカマキリの飼育は難しいと言われますが、以前、小学生がヨーグルトでカマキリを育てたという記事を読み、いつか試してみたいと思っていました。その小学生はカマリキはタンパク質を摂取すれば生きた餌を与えなくても飼育できると考えたようで、ものすごい発想ですね。

ちなみにアゲハチョウ(ナミアゲハ)はスポーツドリンクで飼育することができ、これも思いついた人はすごい! しかも与え方もなかなか驚きです。こちらは以前挑戦してみたので、ぜひご覧ください。




餌の生き物を捕まえるのが大変なので
カマキリをヨーグルトと鶏肉で育てる!

1980年代くらいまでは都心の公園などでもよくカマキリを見ることができました。木の枝やブロック塀に小さなわたあめみたいなカマキリの卵鞘(らんしょう:卵の固まり)もよく見つけました。それを持って帰って飼育ケースに入れておくと、オオカマキリの場合、春ごろに孵化し、卵鞘から数百匹の幼虫が数珠つなぎになって “うじゃうじゃ” と出てきます。

ここまでは卵鞘を飼育ケースに入れてほったらかしておけばいいので、やったことのある方は多いかもしれません。しかし、ここから育てようとすると、なかなか大変です。

体長1センチほどの糸のように細いカマキリの幼虫が数百匹、この小さな幼虫に何を与えればいいのか。そんなことを考えているうちに共食いがはじまり、だんだん数が少なくなるとともに生き残ったカマキリは大きくなっていきます。まさに弱肉強食。

しかし子どもの頃は、そこから育てていくことができませんでした。毎日、餌となる生き物を捕まえるのは大変なことでしたし、秋になるにつれて小さな昆虫もだんだんといなくなっていきます。

ずっと心残りだったカマキリの飼育。2021年4月に知り合いから孵化したばかりの、おそらくオオカマキリの幼虫を譲り受け、40数年ほどの時を経て再び挑戦することにしました。しかも今回はヨーグルトという強い味方がいるとともに、飼育している間に新たなアイデア、タンパク質なら、筋トレ民にはお馴染みの “鶏肉(鶏むね肉)” でいいんじゃない? という案が浮かび試してみました!

最長で約10ヵ月の飼育
交尾、産卵には至らず

ヨーグルト、鶏肉ともにオオカマキリはよく食べ、最終的には4匹が残り、共食いしないようそれぞれの飼育ケースに入れて育てました。交尾をして卵を産み次世代へと命をつなげたかったのですが、残念ながらそれはうまくいきませんでした。また機会があれば、挑戦したいですね。

なお、この記事は2021年4月〜2022年1月に、おそらくオオカマキリを育てた飼育記録です。写真のカマキリは同じ個体とはかぎりません。餌はヨーグルトと鶏肉だけでなく、捕まえられたときはコバエ(ショウジョウバエもしくはキノコバエ)やハエなどの生き餌も与えていましたが、最後の方は季節は冬となり生きた餌は与えられなくなりました。また、屋内のみですべてのカマキリを飼育し、国内外来種に配慮し屋外には逃していません。記事は2025年9月15日(月)に執筆・公開。

国内外来種
もともとその地域には生息していなかった生物が、人によってその地域に持ち込まれ定着すること。「国内外来種」は国外から持ち込まれた「外来種」と区別して用いられる言葉です。また、その地域に同種が生息していたとしても、異なる地域の同種個体が持ち込まれることも「国内外来種」と言います。異なる地域の同種個体と交雑することで、その地域特有の遺伝子が失われる可能性があるためです。その地域固有の遺伝子を持った生物を守るため、地域外の同種個体を安易に野外に放さないことは、とても大切なことです。

カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
2021年4月、知り合いから孵化したばかりの(おそらく)オオカマキリの幼虫をいただきました。飼育ケースには50匹くらい入っていました(写真:2021年4月25日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
あまりに小さくて何を与えればいいのかわからないのは小学生の頃と同じ。やはり共食いをはじめました。頭からかぶりつきます(写真:2021年4月25日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
1週間ほどすると体長は当初の1.5倍ほどに。しかし指にのせても、重さも何かがいる感じもしません(写真:2021年5月1日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
オオカマキリは6〜7回ほど脱皮を繰り返して成虫になるそうですが、これが1回目かな(写真:2021年5月1日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
共食いにより数が減り体も少し大きくなったのでヨーグルトを与えてみることに。つまようじの先に付けたヨーグルトを食べています。ちょっと口に付けたら、意外なほどあっさり食べはじめました(写真:5月6日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
つまようじをカマでしっかり抱えて食べています(写真:5月6日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
1回目から10日ほどして2回目の脱皮。なお、写真のカマキリは同じ個体とはかぎりません(写真:5月11日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
ちょうどその頃カブトムシも飼育していたので、カブトムシの飼育ケースに発生する小さなコバエ(ショウジョウバエもしくはキノコバエ)も餌として与えていました。飼育ケースにコバエを入れると、すぐに見つけてロックオン(写真:5月15日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
オオカマキリに対しては小さなコバエですが、器用にカマで捕まえ食べていました(写真:5月15日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
コバエが自然発生するカブトムシの飼育ケースにカマキリを入れれば、わざわざコバエを与える必要がないかなと、試してみました。コバエ問題も解決するし餌は捕まえなくていいし、これは良いアイデアかも。ごく稀にカマキリがカブトムシを食べることがあるそうですが、大きさや硬さから積極的に捕食することはないそうです。今のカマキリの大きさではとてもカブトムシを捕食できるとは思えませんし、敵対関係にもなさそうなので、うまく共存できれば、夏の終わり頃までは餌の問題が多少解決するかもしれません(写真:5月15日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
さっそくコバエを捕まえて食べていました。写真に写っている緑色のものは、アゲハチョウの幼虫を育てるための山椒の葉です。葉の裏にアブラムシらしきものが付いていたので、与えてみました(写真:5月15日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
食べると体のお腹部分に食べたものが入っているのがわかります。ところどころ黒くなっているのが食べたコバエ。左下には脱皮したものが見えています。3回目かな?(写真:5月15日)
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ヨーグルトとコバエで飼育を続けること1ヵ月、だいぶ大きくなってきました(写真:6月6日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
オオカマキリには茶色ではなく緑色の個体もいます。体色は遺伝的要因と環境要因の複雑な組み合わせによって決まるそうですが、飼育しているカマキリの環境はほぼ一緒なので、遺伝的要因が強く出ているようです。また緑色の個体の方が数は少ないです。オオカマキリは草地や河川敷、緑の多い公園などに生息するので、どちらの色も生息環境への擬態と考えられています(写真:6月6日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
体長が4センチほどとなり、かなり大きくなってきました(写真:6月24日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
2ヵ月ほど空いてしまいましたが、ヨーグルトと捕まえたハエなどの餌ですくすくと育っています。カブトムシはすでに寿命を迎え、コバエはいなくなりました(写真:9月2日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
体が大きくなりヨーグルトでは足りないのか、飽きてきたのか、だんだんとヨーグルトを食べなくなってきました。そこで、タンパク質を与えれば良いならと茹でた鶏の胸肉を与えてみたところ、食べはじめました(写真:10月20日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
鶏肉をガッツリと抱え込んでムシャムシャ食べてます(写真:10月20日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
おそらく5回目くらいの脱皮。翅が生えましたが揃ってないのか、それとも翅をのばして乾かしているのか? セミも同じですが、脱皮って命懸けですね(写真:10月21日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
鶏肉を大事そうに抱えています。くれるのかな? かわいいですね。黒目のようなものがあって目があっているように見えますが、これは「偽瞳孔(ぎどうこう)」と呼ばれるもので、視線があっているわけではありません。また暗いところでは猫のように目の全体が黒くなり視覚能力を高めます(写真:11月5日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
鶏肉をくれるわけではないか。食べはじめました。鶏肉は冷めるとすぐに固くなりますが、そんなことは気にせずバリバリ食べます(写真:11月5日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
この個体は翅がきれいです。お尻を見ると、これはオスかな?(写真:11月5日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
個体が大きくなった頃には、共食いしないよう、飼育ケースを写真のように分けていました。最終的には4匹が残りました(写真:11月11日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
繁殖できないかなと、共食いしないよう餌を与えてお腹を膨らませつつ、オスとメスを近づけてみました。翅がかなりばらけていますが、4匹ともこのような状態でした。脱皮や羽化の失敗で翅はばらけるようです。餌や狭い飼育ケースが原因と考えられるのかもしれません。なお自然界では、敵への威嚇行動の際に翅を大きく開いたり、捕食されそうになることで翅が傷つきばらけてくるようです(写真:11月18日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
オオカマキリを含む多くのカマキリは、交尾の前後や交尾中にメスがオスを食べる「性的共食い」をすることがあります。メスにとっては栄養や繁殖能力を高める戦略でもあるようです。写真はそれっぽく見えるのですが、残念ながら交尾には至らず、命を次世代につなぐことはできませんでした。頭をかじられているカマキリはこのあと逃げることができ、半分ほど頭をなくしながらも、しばらく生きていました。カマキリに限らず昆虫にとっての頭部は人間のそれとは異なり、人間は頭部に脳という生存に関わる重要な機能が集中していますが、昆虫は胸部や腹部にも神経中枢が分散しているため、生命活動の一部を維持できるようです。しかし長くは生きられません(写真:11月18日)
カマキリ(オオカマキリ)の飼い方の写真
この個体は年を越し約10ヵ月ほど生きていました。オオカマキリの寿命は孵化から成虫になるまでも含めて半年から1年程度なので、平均的な寿命をまっとうしたことになりそうです。交尾や産卵は昆虫にとってとても体力を使うことなので、それをしていないからというのも、ある程度長生きした理由かもしれません(写真:2022年1月31日)