
マーヤとは共通点がたくさん! マーヤは理想の女の子!
ー 映画「みつばちマーヤの大冒険」を拝見させていただきました。春名さんのハキハキした声、弾むような声が、好奇心たっぷり、ワクワクしている様子のマーヤにとてもよくあっていました。マーヤの声優に決まったときの気持ちは?
出演が決まったとは聞きましたが、まさか主演のマーヤだとは思わなくて。てんとう虫の女の子の声かな? と思っていたので、「マーヤ」と聞いてびっくりしました! 世界各国でたくさんの方がマーヤの声をやっているので、すべての人の記憶の中のマーヤを壊さないよう、責任は重大だなと思いました。
ー マーヤは元気で明るくて、好奇心が強くてと、春名さんとけっこう似ているのかなと感じたのですが、ご自身ではどう思いますか?
かなり共通点があると思っています。ぼくは常に「好奇心を持つ」「疑問を持つ」、そして「それをちゃんと解決する」ということや、「偏見や先入観を持たず、その人自身と話をしてその人を知る」ということを心がけていて、マーヤは意識せずにそれができているのはすごいことだなと思いました。
ー 春名さんはそれを意識してやっているんですか?
そうです。ぼくはそういう人になりたいな、と思って行動しています。だからマーヤはぼくの理想ですね。理想の女の子です。すごい素敵!
ー それではマーヤと違うところは?
ぼくは人見知りなので、マーヤほど知らない人に何でも話しかけていけるような積極性がありません。マーヤは本当に勇気があって、もちろん悩むこともあるけれど、とても真っすぐに、こうと決めたら、こうする、というのが、すごくしっかりできています。ぼくはそういう子になりたいと思いつつ、まだなりきれていないかなと、マーヤを見て少し反省しました。

『ガラスの仮面』を読んで3歳で女優を目指す
ー 子役としてお芝居もされていましたが、今は声優さんが本業ですか?
本業としては声優としてやっていこうと思っていますが、お芝居すること自体がすごく好きなので、あまり“これだけをやる”、とは決めていません。なんでもやれる機会があったらやりたいなと思っています。ただ、自分の職業を「声優」と名乗れなくなるのは嫌なので、幹の部分は声優、そして枝を、舞台とか、いろいろなところに伸ばしていきたいです。
ー 声優を目指したきっかけや作品はありますか?
“お芝居をしたい!”と感じたのは、3歳のときにおばあちゃんの家で『ガラスの仮面』※1という漫画を読んで、主人公の北島マヤのお芝居にかける情熱というものにすごく惹かれて、「絶対にお芝居をする人になる! 女優さんになる!」という想いを持ちました。
声優は、アニメもその頃から大好きで、特に「少女革命ウテナ」※2が好きで、アニメを観ているうちに「声だけのお芝居だったら、どんな役でもできるんじゃないかな?」と思ったのが最初ですね。声優なら自分の容姿や年齢、身長など、外見のイメージにとらわれずに、地球外生命体にも、みつばちにもなれます。自分とはまったく違う役もやってみたいと思っているので、なんでもできるのがいいなと思いました。
※1 ガラスの仮面
1976年に『花とゆめ』で連載を開始した、美内すずえによる演劇を題材とした少女漫画。平凡な主人公 北島マヤが芝居の才能を開花させ、ライバルと切磋琢磨しながら成長していく物語。2016年現在で49巻、5,000万部を突破した大ベストセラー。49巻が発行されたのが2012年の10月、多くのファンが50巻を待ちわびている。
※2 少女革命ウテナ
1997年4月2日から同年12月24日までテレビ東京系列で放送されたテレビアニメ(全39話)。1999年の夏には劇場用長編アニメ映画も公開。幼い頃に助けてくれた王子様に憧れた少女 天上ウテナが、王子様を目指す物語。シュールで難解な展開、哲学的な言辞などアニメ史上もっとも難解とも言われる作品だが、熱狂的なファンも多い。
ー 3歳で女優さんを目指したんですね。
0歳から仕事をしているので、この世界にいれば、マヤみたいな仕事ができると思いました。5歳くらいまでは赤ちゃんモデルの事務所に所属していたので、この仕事を続けるなら事務所を移らなきゃならなくて、「絶対に続けたい!」と親に話して事務所を移り、それから本格的に活動しています。
ー ん? スルーしちゃいましたけど、3歳で『ガラスの仮面』を読むってすごいですよね?
あんまり信じていただけないんですけど、漫画には漢字にふりがなもありますし。昔から母は本にはこだわっていて、小さい頃から読み聞かせもしてくれましたし、内容もハッピーハッピー的なものじゃないものも多かったですね。

ー 声優として、日々の暮らしのなかでも大切にしていること、気をつけていることはありますか?
お芝居を観ることがすごく好きで、自分が一番学べているなと感じる瞬間は現場に行ったときなんですね。現場に行って、先輩方のお芝居を直に観て、演出家の方などの「こういうふうにやってみてくれる」という指示に対して、先輩方はどう対応するのか、そして自分だったらどうするのか、現場に行って、観て、考えて、学んだことというのはすごく大きいので、声優の仕事ということだけではなく、お芝居をするための感性を磨くためにもいろいろなことを観る、観察するというのは大切にしています。
ー 今回の「みつばちマーヤの大冒険」の現場から学んだことはありますか?
ぼくがすぐに身につけられるものではないんですが、今まで出会ったどの役者さんも素敵ですが、マーヤの友だちのウィリー役が野沢雅子さん※3で、野沢さんの声の“圧”には本当に驚きました。ぼくなんかとはまったく比べ物にならないくらい、マイクに、というかマーヤに、“ズドンっ”と声が突き刺さってくる感覚というのは、本当に経験をたくさん積んで、さらに才能がないと出せない声だなと思いました。将来は絶対、さらにすごい“圧”を出せる声優さんになりたいなと思いました。
※3 野沢雅子
『ゲゲゲの鬼太郎』(鬼太郎)、『ど根性ガエル』(ひろし)、『銀河鉄道999』(星野鉄郎)、そして『ドラゴンボール』シリーズでは孫悟空はじめ親子3人の声を担当するなど、誰もが一度は聞いたことのある日本を代表する声優のひとり。
ー “圧”というのは、声量ということではないんですか?
そうですね。声量ではないですね。なんて言うんだろう? 心に響く、みたいな。気持ちと経験なのかな。
ー 野沢雅子さんはマーヤの友だちのウィリー役ですが、野沢さんからアドバイスをいただいたり、お話はされましたか?
世間話は長々しましたが、仕事に関することはそんなになくて‥‥。野沢さんは「楽しくやれることが一番」という考えの方で、ぼくは感覚でお芝居をすることが多く、何か質問をして教えていただくというよりも、野沢さんのやることを見て、学んでいました。

自分がやりたいことを最優先に、友だち、仲間、そして両親の支え
ー 映画では同じみつばちのウィリーやバッタのフィリップ、スズメバチのスティングと友だちになって、協力し、助け合います。春名さんが友だちや仲間に支えられていると感じるのはどんなときですか?
小学生のときからtwitterで自分を発信するということを続けてきて※4、それに対して共感してくれる方もいれば、そうではない方もいらして、衝突してしまうこともあったんですが、自分の考えを否定されたり、厳しい言葉を投げられたりしたときに、共感してくれる方、すべては賛成できないけど、言いたいことはわかると理解してくれる方、ファンの方々に支えられているなと感じたり、twitterを見た友だちからも「大丈夫か?」とか、「迎えに行くか?」「あんまり無理すんなよ」なんて心配されると、いい友だちを持ったな、と感じます。
家族も心配はしてくれますが、ぼくが“やりたい”と言っていることに対して、こうしなさい、ああしなさい、と言うことはなくて、「自分がやりたいことを第一に優先しなさい」と言ってくれるので、本当にまわりの人たちに助けられている、人のめぐり合わせがいいなと感じています。
※4:春名風花さんのtwitter:はるかぜちゃん

ー ご両親は、春名さんがこのお仕事をするにあたりどんなことをしてくれていますか?
「娘が一生続けたいという仕事なら全力でサポートする」と言って、すぐに行動に移してくれるのは母ですね。送り迎えは母がしてくれています。
父は、本当はこういう活動はあんまり好きじゃない。娘を危険にさらしたくないし、安全に生きていてほしいという考えではありますが、この仕事を続けていて、ぼくが本当に楽しそうだったり、本気でやりたいと思っていることは知っているので「お父さんは何も言わない」と、影で支え、応援してくれています。

自分の本物の感情も使って演技をする、初めての舞台から学んだこと
ー マーヤの大冒険の映画ですが、春名さんが「冒険しちゃったな」と思うことはありますか? これちょっとがんばったなとか、今までの殻を少し破れたかな、とか。
2015年の12月に初めて舞台に立ちました。『TUSK TUSK(タスク タスク)』※5という舞台だったのですが、出演が4人の子どもたちと2人の大人だけで、その中でもめちゃくちゃメインな役だったんです。昔から舞台はやってみたいと思っていたのですが、セリフ量も多くて、最初の舞台でこれだけの大役はかなりのプレッシャーでした。でも最終的には大成功というか、千秋楽ではそのときの自分の精一杯を出し切ったという感覚になって、「この舞台で学んだことって、一生、活かされるかもしれない」って思いました。
※5 『TUSK TUSK』(タスク タスク)※公演は終了しています
春名さんが出演した初舞台作品。引っ越したばかりの部屋で、7歳、14歳、15歳の子どもたちが母親の帰りを待っている。しかし母親はいっこうに戻らない。徐々に切迫していくなか、彼らがとった行動とは? 育児放棄を題材とした作品。
ー どんなことを学べましたか?
基本的にぼくは台本を読んで、役柄についてはすべて自分の中でつくってしまうことがほとんどだったんです。役についての解釈が間違えているとか、特にそういうことはないのですが、人の話を聞いていないというところがあって、舞台上で人の演技を受けて返す、そのときに、芝居をしていても自分というものがベースにあって、自分の中の本物の感情を使って、本物の言葉で返す、というのが、今まで甘かったと。この舞台を経験したことで、そこを学べたなと思っています。自分のなかの引き出しがひとつ増えて、舞台上でも本物の感情を出せることが多くなりました。
ー 舞台上でもすべてが演技ということではくて、本当に自分が感じたことも出していくということですか?
そうですね。もちろん、その役として、ということですけど。ただ先輩からも「これは感覚だから、わかればわかる」とか言われて、「なんなんだよ!」って思ったりもして(笑)。経験を積んでいかないとわからないですね。でもわかった後は、確かにこれは言葉では説明できない、という感じでした。

大人は失いつつある純粋さを、子どもはマーヤの冒険を楽しんで!
ー「みつばちマーヤの大冒険」は、親にとっては懐かしく、子どもにとっては新しい冒険の物語です。それぞれの世代に、映画から何を感じてほしいですか?
年齢を重ねると経験が増えるがために、純粋な視点が欠けてしまったり、考えが固まってしまっている部分があると思います。なのでマーヤから見た世界を観ることで、純粋な視点、偏見や先入観のない真っさらな状態を再認識したり、すべてのことに対して改めて疑問を持ってみる、というのを、今一度思い出していただければなと思います。
お子さんにも疑問を持つことの大切を感じていただければと思いますが、マーヤの冒険を純粋に楽しんでもらえればと思います。マーヤの仕草もとてもかわいいですし、草花の色もめちゃくちゃキレイな色鮮やかな世界なので、そんなところも楽しんでもらえると思います。
セリフもけっこう“グッ!”とくるものがあるんですよ。みつばちの規律を重んじるバズリーナという女官長が、みつばちとはなんたるか、巣の外はどんな世界なのかをマーヤに説くシーンがあるのですが、それを聞いたマーヤは「えっ そんなのバカげてる」って言うんです。
ぼくはこのセリフがとても気に入っています。言われたことを鵜呑みにしないで“なんで?”と疑問を持つこと、体験を通して自ら理解すること、思ったことを素直に発言できることとか、とてもマーヤらしいセリフだと思っています。これはそのあとのめっちゃ長いセリフにつながる、大事なセリフでもあるんです。

ー 少し気が早い質問ですが、もし「みつばちマーヤの大冒険」の続編ができたら、今度はどんな冒険をマーヤとしてみたいですか?
今回マーヤの仲間は、みつばちのウィリーとバッタのフィリップ、そしてスズメバチのスティングだったので、次はどんどんと仲間の輪を広げていければなと思っています。また大人の方たちとわかりあうだけじゃなくて、マーヤと同年代の子たち、ふんころがしやてんとう虫の子ども、そして巣のなかのマーヤと同年代のみつばちと一緒に冒険するとか、みつばちの子どもたちの世界も見てみたいですね。
最初マーヤは「わたし変わっているから、友だちができない」という感じでしたが、はじめての親友(ウィリー)ができて、これからマーヤを受け入れてくれる、わかってくれる友だちが増えるのかなと思うと、すごくワクワクします。
ー 今、声優さんはとても人気のある仕事です。目指している子どもたちもたくさんいますが、どんなことをしたり、勉強すればいいか、アドバイスをいただけますか?
最初はとにかく、いろいろなもの、憧れるものをしっかり見て、観察することからはじめるべきかなと思います。
ぼくが大切にしていることでもありますが、街中を歩いている人でもいいですし、自分の世界にあるものだけじゃない、広い視野でものを見てほしいと思います。また常日頃から、相手と普通に話しているときでも「相手はどう感じているのかな?」と考えたり、人の感情を理解する、内面的なものからはじめていくのがいいと思います。
憧れている人に近づこうとすると、つい声まねなど外から近づいていくことが多いと思います。まねすることは悪いことではなくて、最終的に自分のものになればいいので、まねも練習としては大事だと思いますが、でも一番大切なのはそこじゃなくて、内面的なものを育てていってもらえたらなと思っています。
ー 春名さんの今後の夢、目標は?
最終的な目標としては、長く続けられる役にめぐり会えればいいなと思っています。マーヤが大ヒットして、1年ごとにPart 2、Part 3と続いたりすると、一番いいですね。「ドラゴンボール」や「ドラえもん」のように何世代にもわたって自分の声のキャラクターがつながっていくということは、すごく素敵なことだなと思っていて、それが夢です。野沢雅子さんなんて「何世代なんだよ!」って(笑)、世代によって野沢さんと言えばこのキャラクターというのは違っているかもしれませんが、長く記憶に残ってもらえる作品と出会いたいと思っています。
やってみたい役は、自分がなかなか理解できない役ですね。マーヤは自分と共通点が多かったので、すごく“スッ”と役に入れたのですが、“絶対にこの人とはわかりあえない!”というような役を演じることになって、役づくりに苦しんでみたいと思っています(笑)。

2016年9月3日(土)より、109シネマズ限定ロードショー!
みつばちマーヤの大冒険
1912年に出版された、ドイツのワルデマル・ボンゼルス作の児童文学「みつばちマーヤの冒険」は、各国語に翻訳されて100年以上、世界の子どもたちに愛され続けている名作です。
日本では1975年に日本アニメーション製作のテレビアニメシリーズ「みつばちマーヤの冒険」として最高視聴率21.4%を記録。その後、人気はヨーロッパほか世界44ヵ国で繰り返し放映されています。
映画『みつばちマーヤの大冒険』は、そうした日本のアニメーションの風合いを残して、ドイツでフルCGアニメーション化。冒険好きなみつばちのマーヤが、友達のウィリーやバッタのフィリップらとともにさまざまな冒険の中から成長していく、勇気と夢がつまった心温まる感動の物語です。
春名風花(はるな・ふうか)
2001年生まれ。プロダクション・エース所属。0歳のころから子役として活躍。CM、映画出演からテレビドラマ、舞台と活躍の場を広げ、声優としてもテレビ、劇場アニメに出演。今回の「みつばちマーヤの大冒険」の主役マーヤに抜擢され、外国映画の吹替は初挑戦。ニックネームは“はるかぜちゃん”。
インタビュー後記
春名さんは、一言で言えば“聡明”。9歳ではじめたtwitterで子どもとは思えない、そのあまりに核心を付いた発言はたびたび話題にもなりましたが、どんな質問にも自分の言葉ですぐに応えてくれる姿からも、それは見てとれました。
春名さんにマーヤは、とてもよくあっていました。それはキャラクターと声の雰囲気ということだけではなく、ご自身も共通点が多いとおっしゃっていましたが、根底にある思想も似ているようです。「好奇心を持つ」「疑問を持つ」、そして「それをちゃんと解決する」。「偏見や先入観を持たず、その人自身と話をしてその人を知る」。大人になるに連れて失われていくことの多いものですが、これを幼い頃から理解し、意識的に心がけ、努力・実行しているのが、春名さんのすごいところです。
子役でのお仕事はテレビで拝見させてもらったことがありましたが、インタビューのときにはとてもきれいな女性になっていて、どんな声優さん、女優さんになっていくのかがとても楽しみです。これから出会う作品やお仕事から何を得て、どんなふうに考えが変わり、また変わらなかったか、ぜひまたお話を聞かせてください。これからの春名さんの成長、そして活躍を楽しみにしています。そして、いつまでも「え そんなのバカげてる」と言える春名さんであって欲しいですね。